荀子 / 大略篇
聘禮志曰:「幣厚則傷德,財侈則殄禮。」禮云禮云,玉帛云乎哉!《詩》曰:「物其指矣,唯其偕矣。」不時宜,不敬文,不驩欣,雖指非禮也。
新字:聘礼志曰:「幣厚則傷徳,財侈則殄礼。」礼云礼云,玉帛云乎哉!《詩》曰:「物其指矣,唯其偕矣。」不時宜,不敬文,不驩欣,雖指非礼也。
書き下し
聘礼の志に曰く「幣厚ければ則ち徳を傷り、財侈なれば則ち礼を殄す」と。礼と云い礼と云うも、玉帛を云わんや。詩に曰く「物 其れ旨きかな、唯だ其れ偕しきかな」と。時宜ならず、文を敬まず、驩欣ならざれば、旨しと雖も礼に非ざるなり。
現代語訳
聘礼の記録に「贈り物が厚すぎればかえって徳をそこない、財貨がぜいたくにすぎれば礼を台無しにする」とある。礼だ礼だと言うけれども、玉や絹布のことを言っているのではない。詩経に「供え物は味わいよく、しかもみな揃っている」とある。時宜にかなわず、作法に慎みがなく、心から喜び合うのでなければ、たとえ味わいがよくても礼ではない。
解説
贈り物が厚ければ厚いほど礼が篤いわけではない、と釘を刺す一段です。度を超えた贈り物はかえって徳をそこない、財貨のぜいたくは礼そのものを台無しにする。礼、礼と口にするけれども、それは玉や絹布といった品物のことではない、と荀子は言い切ります。大切なのは、時宜にかなっていること、作法に慎みがあること、そして贈る側と受ける側が心から喜び合えることです。この三つを欠けば、どれほど立派な品でも礼にはならない。物の値打ちと気持ちの深さを混同するな、という戒めです。現代でも、高価な手土産や派手な接待が、かえって相手に気を遣わせ、関係を歪めてしまうことがあります。何を贈るかより、いつ、どんな態度で、どんな心持ちで差し出すか。礼の中身は最後まで人の側にあるのだと、この一段は教えます。
この章句が説くこと
幣厚ければ徳を傷る玉帛にあらず時宜と慎み贈り物の作法誠意敬意
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