荀子 / 大略篇
人主仁心設焉,知其役也,禮其盡也,故王者先仁而後禮,天施然也。
新字:人主仁心設焉,知其役也,礼其尽也,故王者先仁而後礼,天施然也。
書き下し
人主は仁心 焉を設く。知は其の役なり、礼は其の尽なり。故に王者は仁を先にして礼を後にす、天の施すこと然るなり。
現代語訳
君主はまず仁の心をそこに据える。知恵はその仁に仕える働き手であり、礼はその仁を余さず形にするものである。だから王者は仁を先に置き、礼を後に置く。それは天のはたらきがもともとそうなっているからである。
解説
礼の細目を並べてきた流れの中で、その根っこを示した重要な一段です。君主がまず据えるべきは仁の心であり、知恵はその仁のために働く手足、礼は仁を余すところなく形にしたものだと言います。だから順序としては仁が先で礼が後になる、というのが荀子の主張です。礼を重んじる荀子が、それでも礼より仁を先に置くところに、この学問の芯があります。形式だけの礼、心のこもらない作法は、根を欠いた枝葉にすぎません。逆に、思いだけあって形にできなければ、相手には届かない。だから仁を先に、礼を後に、と両方を順序立てて言うのです。私たちの仕事でも、まず相手を思う気持ちがあり、その気持ちを届けるために段取りや作法があります。順番を取り違えると、どれほど整った手続きも冷たく響きます。