荀子 / 大略篇
天子山冕,諸侯玄冠,大夫裨冕,士韋弁,禮也。
新字:天子山冕,諸侯玄冠,大夫裨冕,士韋弁,礼也。
書き下し
天子は山冕、諸侯は玄冠、大夫は裨冕、士は韋弁、礼なり。
現代語訳
天子は山の文様をあしらった冕の冠、諸侯は黒い冠、大夫は裨冕、士はなめし革の弁の冠をかぶる。これが礼である。
解説
冠の種類を身分ごとに書き分けた、ごく短い一段です。天子は山の文様をあしらった冕、諸侯は黒い冠、大夫は裨冕、士はなめし革の弁と、それぞれかぶるべきものが決まっている。ただの服装規定のようですが、荀子にとって礼とは、目に見えない秩序を目に見える形に変える装置でした。何をかぶっているかを見れば、その人がどの役割を担い、どんな責任を負っているかがわかる。だからこそ、身につけるものは勝手に選べないのです。現代の私たちにも、制服や名札、社章、あるいは場にふさわしい服装という形で同じ働きが残っています。何を着るかは自己表現であると同時に、自分がいま何者としてその場に立っているかの表明でもあります。装いを整えることは、役割を引き受ける覚悟を自分に確認させる行為でもあるのです。