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荀子 / 正名篇

異形離心交喻,異物名實玄紐,貴賤不明,同異不別;如是,則志必有不喻之患,而事必有困廢之禍。故知者為之分別制名以指實,上以明貴賤,下以辨同異。貴賤明,同異別,如是則志無不喻之患,事無困廢之禍,此所為有名也。

新字:異形離心交喻,異物名実玄紐,貴賤不明,同異不別;如是,則志必有不喻之患,而事必有困廃之禍。故知者為之分別制名以指実,上以明貴賤,下以辨同異。貴賤明,同異別,如是則志無不喻之患,事無困廃之禍,此所為有名也。

書き下し

異形にして心を離れて交々喩り、異物にして名実玄紐たり、貴賤明らかならず、同異別たれず。是くの如くんば、則ち志に必ず喩らざるの患い有り、而して事に必ず困廃の禍い有り。故に知者は之が為に分別し名を制して以て実を指し、上は以て貴賤を明らかにし、下は以て同異を弁ず。貴賤明らかに、同異別たれ、是くの如くんば則ち志に喩らざるの患い無く、事に困廃の禍い無し。此れ名有る所以なり。

現代語訳

形の違うものについて人それぞれが心の中で勝手に理解し合い、別々の物について名と実の関係がもつれて絡み合い、身分の貴賤も明らかでなく、同じものと異なるものの区別もつかない。こうなると、意志が相手に通じないという心配が必ず生じ、仕事は行き詰まって挫折するという災いが必ず起こる。そこで知者は、これに対して区別を立て、名を定めて実体を指し示し、上は身分の貴賤を明らかにし、下は同異を区別するのである。貴賤が明らかになり、同異が区別されれば、意志が通じないという心配もなく、仕事が行き詰まる災いもない。これが、名というものが存在する理由である。

解説

そもそも何のために名前があるのか、という問いに荀子が正面から答える段です。その答えは、きわめて実用的です。名がなければ、同じ言葉を使っていても各自が違うものを思い浮かべ、意志が通じず、仕事が止まってしまう。だから知者は区別を立てて名を定め、上は立場や役割の違いを明らかにし、下は物事の同じ・違うを見分けられるようにする。名は真理を飾り立てるためのものではなく、意志を通じさせ、仕事を成り立たせるための道具だ、というのが荀子の見方です。会議で言葉の定義が食い違ったまま話が進めば、決めたはずのことが後から崩れます。用語の意味をそろえる、役割の呼び名をはっきりさせる。地味な作業ですが、これこそ「事に困廃の禍い無し」を実現する仕事です。

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