荀子 / 正論篇
世俗之為說者曰:「太古薄揹,棺厚三寸,衣衾三領,葬田不妨田,故不掘也;亂今厚葬飾棺,故抇也。」是不及知治道,而不察於抇不抇者之所言也。凡人之盜也,必以有為,不以備不足,則以重有餘也。而聖王之生民也,皆使富厚優猶知足,而不得以有餘過度。故盜不竊,賊不刺,狗豕吐菽粟,而農賈皆能以貨財讓。風俗之美,男女自不取於涂,而百姓羞拾遺。故孔子曰:「天下有道,盜其先變乎!」雖珠玉滿體,文繡充棺,黃金充槨,加之以丹矸,重之以曾青,犀象以為樹,琅玕、龍茲、華覲以為實,人猶莫之抇也。是何故也?則求利之詭緩,而犯分之羞大也。
新字:世俗之為説者曰:「太古薄揹,棺厚三寸,衣衾三領,葬田不妨田,故不掘也;乱今厚葬飾棺,故抇也。」是不及知治道,而不察於抇不抇者之所言也。凡人之盗也,必以有為,不以備不足,則以重有余也。而聖王之生民也,皆使富厚優猶知足,而不得以有余過度。故盗不窃,賊不刺,狗豕吐菽粟,而農賈皆能以貨財譲。風俗之美,男女自不取於涂,而百姓羞拾遺。故孔子曰:「天下有道,盗其先変乎!」雖珠玉満体,文繍充棺,黄金充槨,加之以丹矸,重之以曽青,犀象以為樹,琅玕、竜茲、華覲以為実,人猶莫之抇也。是何故也?則求利之詭緩,而犯分之羞大也。
書き下し
世俗の説を為す者曰く、「太古は薄葬にして、棺は厚さ三寸、衣衾は三領、葬田は田を妨げず、故に掘(あば)かれざるなり。乱れたる今は厚葬して棺を飾る、故に抇(あば)かるるなり」と。是れ治道を知るに及ばずして、抇(あば)くと抇かざるとに察(あきら)かならざる者の言なり。凡そ人の盗むや、必ず為す有るを以てす。不足に備うるに非ざれば、則ち余り有るを重ぬるを以てなり。而して聖王の民を生かすや、皆な富厚優猶にして足るを知らしめ、而して余り有りて度に過ぐるを得しめず。故に盗は竊(ぬす)まず、賊は刺さず、狗豕は菽粟を吐き、而して農賈は皆な能く貨財を以て譲る。風俗の美なる、男女は自ら涂(みち)に取らず、而して百姓は遺を拾うを羞ず。故に孔子曰く、「天下に道有らば、盗、其れ先ず変ぜんか」と。珠玉体に満ち、文繡棺に充ち、黄金槨に充ち、之に加うるに丹矸を以てし、之に重ぬるに曾青を以てし、犀象以て樹を為り、琅玕・龍茲・華覲以て実と為すと雖も、人猶お之を抇く莫きなり。是れ何の故ぞや。則ち利を求むるの詭(こころ)緩くして、分を犯すの羞(はじ)大なればなり。
現代語訳
世間で議論を立てる者はこう言う。「大昔の葬りは質素で、棺の厚みは三寸、衣と掛け布は三枚、墓の土地は耕作地の邪魔にならないほどで、だから墓を暴かれることがなかった。乱れた今の世は、手厚く葬って棺を飾り立てる、だから墓が暴かれるのだ」と。これは、世を治める道を知らず、墓が暴かれるか暴かれないかの本当の理由を見抜けない者の言葉である。そもそも人が盗みを働くのには、必ずわけがある。足りないものを補うためか、そうでなければ、余っているものをさらに積み増すためだ。ところが聖王が民を養うときには、みなを豊かにして満ち足りることを知らせ、そのうえで度を越して余分を抱え込ませないようにする。だから盗人は盗まず、悪人は人を傷つけず、犬や豚も豆や粟を食べ余して吐き出すほどで、農民も商人も財貨を譲り合うことができる。風俗が美しく、男も女も道に落ちているものを自分から拾わず、民は落とし物をわがものにするのを恥じる。だから孔子は「天下に道が行われれば、まず盗みから変わっていくだろう」と言ったのだ。たとえ珠玉が亡骸を覆い、刺繍の布が棺に満ち、黄金が外棺に満ち、そこに丹砂を加え、藍銅鉱を重ね、犀の角や象牙で樹をかたどり、美しい玉や珍しい宝を実としてあしらったとしても、それでも人は墓を暴かない。なぜか。利を求める気持ちがゆるやかで、分を越えることへの恥が大きいからである。
解説
この章句が説くこと
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荀子・正論篇夫れ「太古は薄葬なり、故に抇かれず。乱れたる今は厚葬なり、故に抇かる」と曰うは、是れ特(ただ)姦人の乱説に誤りて、以て愚者を欺きて之を淖陷(どうかん)し、以て偸(ぬす)みて利を取るのみ。夫れ是れを之れ大姦と謂う。伝に曰く、「人を危うくして自ら安んじ、人を害して自ら利す」と。此れの謂いなり。
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呂氏春秋・節喪④民の利に於けるや、流矢を犯し、白刃を蹈み、血を渉り肝を抽き、以て之を求む。野人の聞くこと無き者は、親戚・兄弟・知交に忍んで以て利を求む。今此の危き無く、此の醜無くして、其の利為るは甚だ厚く、車に乘り肉を食らい、澤は子孫に及べば、聖人と雖も猶ほ禁ずること能わず、而るを況んや亂國に於いてをや。國彌々大に、家彌々富めば、葬彌々厚く、含珠鱗施・玩好貨寶・鍾鼎壺濫・轝馬衣被戈劍、其れ數うるに勝う可からず。諸々の生を養うの具、從えざる者無く、題湊の室、棺槨數襲、積石積炭、以て其の外を環らす。姦人之を聞き、傳えて以て相告ぐ。上以て威を嚴にし罪を重くして、之を禁ずと雖も、猶は止む可からず。且つ死者彌々久しくなれば、生者彌々疏し。生者彌々疏ければ、則ち守る者彌々怠る。守る者彌々怠りて、葬器故の如くなれば、其の勢い固より安からず。世俗の喪を行うに、之を載するに大輴を以てし、羽旄旌旗雲の如く、僂翣以て之を督し、珠玉以て之に備え、黼黻文章以て之を飭り、紼を引く者左右萬人、以て之を行い、軍制を以て之を立て、然る後に可なり。此を以て世に觀せば、則ち美なり侈なり。此を以て死の為にすれば、則ち不可なり。苟しくも死に便ならば、則ち國を貧しくし民を勞すと雖も、若の慈親孝子なる者の為すを辭せざる所なり。
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荀子・正論篇夫れ乱れたる今は然る後に是に反す。上は法無きを以て使い、下は度無きを以て行う。知者は慮るを得ず、能者は治むるを得ず、賢者は使わるるを得ず。是くの若くんば、則ち上は天性を失い、下は地利を失い、中は人和を失う。故に百事廃れ、財物詘(つ)き、而して禍乱起こる。王公は則ち上に不足を病み、庶人は則ち下に凍え餧(う)え羸瘠(るいせき)す。是に於いてか桀紂群居して、盗賊撃奪して以て上を危うくす。安んぞ禽獣の行、虎狼の貪あり、故に巨人を脯にして嬰児を炙る。是くの若くんば則ち何の尤(とが)有りてか人の墓を抇き、人の口を抉りて利を求めんや。此れ裸にして之を薶(うず)むと雖も、猶お且つ必ず抇かれん。安くんぞ葬薶するを得んや。彼れ乃ち将に其の肉を食らいて其の骨を齕(か)まんとするなり。
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荀子・君子篇聖王上に在りて、分義(ぶんぎ)下に行わるれば、則ち士大夫に流淫の行い無く、百吏官人に怠慢の事無く、眾庶百姓に姦怪の俗無く、盜賊の罪無く、敢えて上を犯すの大禁を犯す莫し。天下曉然として、皆な夫(か)の盜竊は以て富を為すべからざるを知り、皆な夫の賊害は以て壽(いのちなが)かるべからざるを知り、皆な夫の上を犯すの禁は以て安かるべからざるを知る。其の道に由れば則ち人其の好む所を得、其の道に由らざれば則ち必ず其の惡(にく)む所に遇う。是の故に刑罰綦(きわ)めて省(すく)なくして威の行わるること流るるが如し。世曉然として皆な夫の姦を為さば則ち隱竄(いんざん)逃亡の由(みち)有りと雖も免るるに足らざるを知る。故に罪に服して請わざるは莫し。書に云う、「凡そ人は自ら罪を得(う)」と。此れ之れの謂いなり。
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『潜夫論』浮侈今、枿畢の郊、文武の陵、南城の塁、曾皙の塚を按ずるに、周公は忠ならざるに非ず、曾子は孝ならざるに非ず。以為らく、君を褒め父を顕すは、財を聚むるに在らず、名を揚げ祖を顕すは、車馬に在らず、と。孔子曰く、「貨財多ければ徳を傷り、弊るれば則ち礼を没す」と。晋の霊は賦を厚くして以て牆を雕り、春秋は以て君に非ずと為す。華元・楽呂は文公を厚葬し、春秋は以て臣ならずと為す。況んや群司士庶、乃ち主上を僭侈し、天道に過ぐべけんや。景帝の時、原侯衛不害は葬の律に過ぐるに坐して国を奪われ、明帝の時、桑民摐陽侯は塚の製に過ぐるに坐して髡削せらる。今天下は浮侈して本を離れ、僭奢して上に過ぐ、亦た已に甚だし。凡そ諸もろの譏る所、皆な民の性に非ず、而して競い務むる者は、乱政薄化の之をして然らしむるなり。王者は世を統べ民を観て教えを設け、乃ち能く風を変え俗を易え、以て太平を致す。
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『潜夫論』浮侈古は必ず命民有り、然る後に乃ち繒彩を衣て車馬に乗るを得たり。今は既に尽くは古に復する能わざるも、細民は誠に須いざるべし、乃ち古昔の孝子を逾ゆ。衣は必ず細致、履は必ず獐麂、組は必ず文采、襪を飾るに必ず鋋此、車馬を校飾し、奴婢を多く畜う。諸もろ此くの若くなる能う者は、既に穀を生ぜず、又た坐して蠧賊と為るなり。子曰く、「古の葬る者は、厚く之に衣するに薪を以てし、之を中野に葬り、封せず樹えず、喪期に時無し、後世の聖人之を易うるに棺槨を以てす」と。桐木もて棺と為し、葛采もて緘と為し、下は泉に及ばず、上は臭を泄らさず。後世は楸梓槐柏狖霡を以て、各々方土の出す所を取り、膠漆分かち致し、釘細く要は削り除き鏟り靡し、際会を見ず、其の堅きは恃むに足り、其の用は任ずるに足る、此くの如くにして可なり。其の後京師の貴戚は、必ず江南の檽梓豫章楩楠を欲し、辺遠の下土も、亦た競いて相い仿効す。
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