荀子 / 致士篇
得眾動天。美意延年。誠信如神,夸誕逐魂。
書き下し
衆を得れば天を動かす。美意は年を延ぶ。誠信は神の如く、夸誕は魂を逐う。
現代語訳
多くの人の心を得れば、天をも動かす。善い心持ちは寿命を延ばす。まことの誠実さは神のようにはたらき、大げさな偽りは魂を追い散らす。
解説
わずか十数字の警句が並んだ短い一段です。人々の心をつかむことは天を動かすほどの力を持ち、穏やかで善い心持ちは寿命さえ延ばす。誠実さは神のように人に通じるが、大げさな誇張や偽りは、かえって人の魂を散らし、自分の芯を失わせる、と説きます。荀子は本来、天を人格的な神とは見ない現実主義者ですが、ここでは「天を動かす」という強い言い方で、人心を得ることの力を表現しています。注目したいのは誠信と夸誕の対比です。誠実さは地味で目立ちませんが、時間をかけて確実に人に届く。一方、話を大きく盛る癖は、その場では受けても、やがて自分自身の信用と落ち着きを削っていきます。日々の仕事でも、成果を大きく見せたい誘惑は常にあります。そのたびに、誇張ではなく誠実さのほうに一票を投じる。その積み重ねが、長い目で見た信用をつくります。