荀子 / 臣道篇
恭敬、禮也;調和、樂也;謹慎、利也;鬥怒、害也。故君子安禮樂利,謹慎而無鬥怒,是以百舉而不過也。小人反是。
新字:恭敬、礼也;調和、楽也;謹慎、利也;鬥怒、害也。故君子安礼楽利,謹慎而無鬥怒,是以百舉而不過也。小人反是。
書き下し
恭敬は礼なり。調和は楽なり。謹慎は利なり。闘怒は害なり。故に君子は礼楽利に安んじ、謹慎にして闘怒無し。是を以て百挙して過たざるなり。小人は是に反す。
現代語訳
うやうやしく敬うこと、それが礼である。調子を合わせ和らげること、それが楽である。慎み深くあること、それが利である。争い怒ること、それが害である。だから君子は礼と楽と利に安んじ、慎み深くあって争い怒ることがない。だから何度事を起こしても誤らないのである。つまらぬ者はこれと反対である。
解説
わずか数十字の短い一段ですが、荀子の人間観が凝縮されています。うやうやしく敬うことが礼、調子を合わせて和らげることが楽、慎み深くあることが利、そして争い怒ることが害である。礼と楽という儒家の中心概念を、日常のふるまいのレベルまで引き下ろしている点が見どころです。礼は儀式のことではなく、目の前の人を敬う態度そのもの。楽は音楽のことではなく、場を和らげ調子を合わせる働きそのもの。そして荀子は、慎み深さは道徳的に立派なだけでなく、実際に自分の利になると言い切ります。逆に、怒って争うことは、正しさの有無にかかわらず害になる。だから君子は何度事を起こしても誤らず、つまらぬ者はその反対をやってしまう。腹の立つ場面に出会ったとき、この一段を思い出すと、怒りをぶつけるという選択肢がいかに割に合わないかがよく分かります。慎重さは、最も現実的な戦略なのです。