荀子 / 富国篇
兼足天下之道在明分:掩地表畝,刺屮殖穀,多糞肥田,是農夫眾庶之事也。守時力民,進事長功,和齊百姓,使人不偷,是將率之事也。高者不旱,下者不水,寒暑和節,而五穀以時孰,是天之事也。若夫兼而覆之,兼而愛之,兼而制之,歲雖凶敗水旱,使百姓無凍餧之患,則是聖君賢相之事也。
新字:兼足天下之道在明分:掩地表畝,刺屮殖穀,多糞肥田,是農夫眾庶之事也。守時力民,進事長功,和斉百姓,使人不偷,是将率之事也。高者不旱,下者不水,寒暑和節,而五穀以時孰,是天之事也。若夫兼而覆之,兼而愛之,兼而制之,歲雖凶敗水旱,使百姓無凍餧之患,則是聖君賢相之事也。
書き下し
天下を兼ね足らしむるの道は分を明らかにするに在り。地を掩い畝を表し、屮を刺して穀を殖え、糞を多くし田を肥やすは、是れ農夫衆庶の事なり。時を守り民を力めしめ、事を進め功を長じ、百姓を和齊し、人をして偷ならざらしむるは、是れ將率の事なり。高き者は旱せず、下き者は水せず、寒暑和節して、五穀時を以て孰るは、是れ天の事なり。若し夫れ兼ねて之を覆い、兼ねて之を愛し、兼ねて之を制し、歳凶敗水旱すと雖も、百姓をして凍餧の患無からしむるは、則ち是れ聖君賢相の事なり。
現代語訳
天下のすべてを満ち足らせる道は、分を明らかにすることにある。土地を開いて畝を区切り、雑草を取り除いて穀物を植え、肥料をたっぷり与えて田を肥やす。これは農民たちの仕事である。時季を守って民を励まし、仕事を進めて成果を伸ばし、人々を和合させ、怠けさせないようにする。これは指揮監督する者の仕事である。高い土地が干上がらず、低い土地が水に浸からず、寒暑がほどよく調い、五穀が時季どおりに実る。これは天の仕事である。そして、すべてを覆い、すべてを慈しみ、すべてを統御して、たとえ凶作や水害や干害の年であっても、民に凍えや飢えの苦しみを味わわせない。これは聖君と賢相の仕事である。
解説
分を明らかにするという主題が、ここでは職分の切り分けとして具体的に描かれます。土を耕し作物を育てるのは農民の仕事。人を励まし進捗を管理し、和を保って怠けさせないのは監督者の仕事。気候が順調であるかどうかは天の仕事。そして、凶作や災害が起きても民を飢えさせない備えをするのが、君主と宰相の仕事だ、と荀子は割り振ります。ここで見逃せないのは、天の領域が明確に切り離されていることです。天候は人の力の及ぶところではない。だからこそ人がやるべきは、天を恨むことでも祈ることでもなく、悪い年が来ることを前提に備えを積んでおくことなのです。荀子らしい合理的な発想です。仕事でも、自分の担当、管理職の担当、そして誰にも制御できない外部環境は分けて考える必要があります。制御できないことに備え、制御できることに全力を注ぐ。この線引きが力を生みます。