荀子 / 富国篇
今之世而不然:厚刀布之斂,以奪之財;重田野之賦,以奪之食;苛關市之征,以難其事。不然而已矣:有掎絜伺詐,權謀傾覆,以相顛倒,以靡敝之。百姓曉然皆知其汙漫暴亂,而將大危亡也。是以臣或弒其君,下或殺其上,粥其城,倍其節,而不死其事者,無他故焉,人主自取之。《詩》曰:「無言不讎,無德不報。」此之謂也。
新字:今之世而不然:厚刀布之斂,以奪之財;重田野之賦,以奪之食;苛関市之征,以難其事。不然而已矣:有掎絜伺詐,権謀傾覆,以相顛倒,以靡敝之。百姓暁然皆知其汚漫暴乱,而将大危亡也。是以臣或弒其君,下或殺其上,粥其城,倍其節,而不死其事者,無他故焉,人主自取之。《詩》曰:「無言不讎,無徳不報。」此之謂也。
書き下し
今の世は然らず。刀布の斂を厚くし、以て之が財を奪う。田野の賦を重くし、以て之が食を奪う。關市の征を苛にし、以て其の事を難くす。然らざるのみに非ず、掎絜伺詐し、權謀傾覆して、以て相い顛倒し、以て之を靡敝す。百姓曉然として皆な其の汙漫暴亂にして、將に大いに危亡せんとするを知るなり。是を以て臣或いは其の君を弑し、下或いは其の上を殺し、其の城を粥り、其の節に倍き、而して其の事に死せざる者は、他の故無し、人主自ら之を取るなり。詩に曰く、言として讎いられざるは無く、徳として報いられざるは無し、と。此れの謂いなり。
現代語訳
ところが今の世はそうではない。貨幣の取り立てを重くして民の財を奪い、農地の税を重くして民の食を奪い、関所や市場の税を厳しくして民の仕事をやりにくくする。それだけではない。揚げ足を取り、相手の隙をうかがい、権謀術数で人を陥れ、ひっくり返し合って、民を疲れ果てさせる。民衆はそれをはっきり見抜いていて、上の者たちが汚らしく乱暴であり、やがて大きな破滅を迎えることを皆わかっている。だから臣下が君主を弑し、下の者が上の者を殺し、城を売り渡し、節義に背き、主君のために死のうとしない。これは他でもない、君主が自ら招いたことである。詩に、どんな言葉にも返される言葉があり、どんな行いにも返される報いがある、とあるのは、このことを言っている。
解説
この章句が説くこと
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荀子・富国篇國の強弱貧富を觀るに徴有り。上禮を隆ばざれば則ち兵弱し。上民を愛せざれば則ち兵弱し。已諾信ならざれば則ち兵弱し。慶賞漸からざれば則ち兵弱し。將率能あらざれば則ち兵弱し。上功を好めば則ち國貧し。上利を好めば則ち國貧し。士大夫衆ければ則ち國貧し。工商衆ければ則ち國貧し。制數度量無ければ則ち國貧し。下貧しければ則ち上貧しく、下富めば則ち上富む。故に田野縣鄙なる者は、財の本なり。垣窌倉廩なる者は、財の末なり。百姓時に和し、事業敘を得る者は、貨の源なり。等賦府庫なる者は、貨の流なり。故に明主は必ず謹んで其の和を養い、其の流を節し、其の源を開きて、時に焉を斟酌す。潢然として天下をして必ず餘り有らしめ、而して上は足らざるを憂えず。是の如くんば、則ち上下俱に富み、交も之を藏する所無し。是れ國計の極を知るなり。故に禹は十年の水、湯は七年の旱にして、天下に菜色の者無し。十年の後、年穀復た孰り、而して陳積餘り有り。是れ它の故無し、本末源流を知るの謂いなり。故に田野荒れて倉廩實ち、百姓虚しくして府庫滿つ、夫れ是れを之れ國蹶と謂う。其の本を伐り、其の源を竭くして、之を其の末に並すれども、然も主相惡むを知らざれば、則ち其の傾覆滅亡は立ちどころにして待つべきなり。國を以て之を持するも、而も以て其の身を容るるに足らず、夫れ是れを之れ至貧と謂う。是れ愚主の極なり。將に以て富を取らんとして其の國を喪い、將に以て利を取らんとして其の身を危うくす。古え萬國有り、今は十數のみ。是れ它の故無し、其の以て之を失う所は一なり。人に君たる者も亦た以て覺むべし。百里の國も、以て獨立するに足る。
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荀子・王覇篇国を傷る者は、何ぞや。曰く、小人を以て民に尚しめて威あり、民に取る所に非ざるを以て巧なるは、是れ国を傷るの大災なり。大国の主なるに、而も小利を見るを好むは、是れ国を傷る。其の声色・台榭・園囿に於けるや、愈いよ厭きて新たなるを好むは、是れ国を傷る。其の有つ所以を脩正するを好まず、啖啖として常に人の有を欲するは、是れ国を傷る。三邪なる者匈中に在りて、而も又た権謀傾覆の人を以て、事を其の外に断ずるを好む。是くの若くんば、則ち権は軽く名は辱められ、社稷必ず危うし、是れ国を傷る者なり。大国の主なるに、本行を隆くせず、旧法を敬わずして、詐故を好む。是くの若くんば、則ち夫の朝廷群臣も、亦た従いて礼義を隆くせずして傾覆を好むに俗を成さん。朝廷群臣の俗是くの若くんば、則ち夫の衆庶百姓も亦た従いて礼義を隆くせずして貪利を好むに俗を成さん。君臣上下の俗、是くの若からざるは莫くんば、則ち地は広しと雖も、権は必ず軽く、人は衆しと雖も、兵は必ず弱く、刑罰は繁しと雖も、令は下に通ぜず。夫れ是れを之れ危国と謂う、是れ国を傷る者なり。
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荀子・富国篇天下の公患は、亂の之を傷るなり。胡ぞ嘗試に相い與に亂を求むる者は誰なるかを求めざる。我れ墨子の非樂を以てするや、則ち天下をして亂れしめん。墨子の節用は、則ち天下をして貧しからしめん。將に之を墮さんとするに非ざるも、説として免れざるなり。墨子大にしては天下を有ち、小にしては一國を有つも、將に蹙然として粗を衣、惡を食い、憂戚して樂を非とせんとす。是の若くんば則ち瘠す、瘠すれば則ち欲するに足らず、欲するに足らざれば則ち賞行われず。墨子大にしては天下を有ち、小にしては一國を有つも、將に人徒を少なくし、官職を省き、功勞苦を上び、百姓と事業を均しくし、功勞を齊しくせんとす。是の若くんば則ち威あらず、威あらざれば則ち罰行われず。賞行われざれば、則ち賢者は得て進むべからざるなり。罰行われざれば、則ち不肖者は得て退くべからざるなり。賢者は得て進むべからず、不肖者は得て退くべからざれば、則ち能不能は得て官すべからざるなり。是の若くんば、則ち萬物は宜を失い、事變は應を失い、上は天時を失い、下は地利を失い、中は人和を失い、天下敖然として、燒くが若く焦がすが若し。墨子之が為に褐を衣、索を帶し、菽を嚽い水を飲むと雖も、惡んぞ能く之を足らしめんや。既に以て其の本を伐り、其の原を竭くして、天下を焦がすなり。
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荀子・富国篇國の治亂臧否を觀るは、疆易に至りて端已に見わる。其の候徼支繚たり、其の竟關の政盡く察なるは、是れ亂國のみ。其の境に入りて、其の田疇穢れ、都邑露わなるは、是れ貪主のみ。其の朝廷を觀て、則ち其の貴き者賢ならず。其の官職を觀て、則ち其の治むる者能あらず。其の便嬖を觀て、則ち其の信ずる者愨ならざるは、是れ闇主のみ。凡そ主相臣下百吏の屬、其の貨財の取與計數に於けるや、順孰盡察にして、其の禮義節奏や、芒軔僈楛なるは、是れ辱國のみ。其の耕す者は田を樂しみ、其の戰士は難に安んじ、其の百吏は法を好み、其の朝廷は禮を隆び、其の卿相は議を調うるは、是れ治國のみ。其の朝廷を觀て、則ち其の貴き者賢なり。其の官職を觀て、則ち其の治むる者能あり。其の便嬖を觀て、則ち其の信ずる者愨なるは、是れ明主のみ。凡そ主相臣下百吏の屬、其の貨財の取與計數に於けるや、寬饒簡易にして、其の禮義節奏に於けるや、陵謹盡察なるは、是れ榮國のみ。賢齊しければ則ち其の親しき者先ず貴く、能齊しければ則ち其の故き者先ず官す。其の臣下百吏、汙なる者は皆な化して脩まり、悍なる者は皆な化して愿となり、躁なる者は皆な化して愨となるは、是れ明主の功のみ。
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荀子・富国篇國を持するの難易は、強暴の國に事うるは難く、強暴の國をして我に事えしむるは易し。之に事うるに貨寶を以てすれば、則ち貨寶單きて交わりは結ばれず。約信盟誓すれば、則ち約定まりて畔くこと日無し。國の錙銖を割きて以て之に賂すれば、則ち割定まりて欲は厭くこと無し。之に事うること彌いよ煩わしければ、其の人を侵すこと愈いよ甚だしく、必ず資單き國舉がるに至りて然る後に已む。左に堯し右に舜すと雖も、未だ此の道を以て免るるを得る者有らざるなり。之を譬うるに是れ猶お處女をして寶珠を嬰け、寶玉を佩び、黄金を負戴せしめて、中山の盜に遇うがごとし。之が為に逢蒙の視を為し、要を詘し膕を撓め、盧屋の妾に君たるも、由お將に以て免るるに足らざらんとするなり。故に一人の道有るに非ざれば、直だ將に巧繁拜請して畏れて之に事えんとするは、則ち以て國を持し身を安んずるに足らず。故に明君は道とせざるなり。必ず將に禮を脩めて以て朝を齊え、法を正して以て官を齊え、政を平らかにして以て民を齊えんとす。然る後、節奏は朝に齊しく、百事は官に齊しく、衆庶は下に齊し。是の如くんば、則ち近き者は競いて親しみ、遠方は願いを致し、上下心を一にし、三軍力を同じくす。名聲は以て之を暴炙するに足り、威強は以て之を捶笞するに足る。拱揖指揮して、強暴の國も趨り使わざるは莫し。之を譬うるに是れ猶お烏獲と焦僥と搏つがごとし。故に曰く、強暴の國に事うるは難く、強暴の國をして我に事えしむるは易し、と。此れの謂いなり。
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荀子・王制篇彊を用うる者は、人の城守り、人の出でて戦うに、我力を以て之に勝てば、則ち人の民を傷つくること必ず甚だし。人の民を傷つくること甚だしければ、則ち人の民の我を悪むこと必ず甚だし。人の民の我を悪むこと甚だしければ、則ち日に我と闘わんと欲す。人の城守り、人の出でて戦うに、我力を以て之に勝てば、則ち吾が民を傷つくること必ず甚だし。吾が民を傷つくること甚だしければ、則ち吾が民の我を悪むこと必ず甚だし。吾が民の我を悪むこと甚だしければ、則ち日に我が為に闘うを欲せず。人の民は日に我と闘わんと欲し、吾が民は日に我が為に闘うを欲せざるは、是れ彊き者の反って弱くなる所以なり。地来たりて民去り、累多くして功少なく、守る者益すと雖も、守る所以の者は損ずるは、是れ大なる者の反って削らるる所以なり。諸侯は交わりを懐きて怨みを接せざる莫く、而も其の敵を忘れず、彊大の間を伺い、彊大の敝に承ず。此れ彊大の殆うき時なり。
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