荀子 / 非十二子篇
吾語汝學者之嵬容:其冠絻,其纓禁緩,其容簡連;填填然,狄狄然,莫莫然,瞡瞡然,瞿瞿然,盡盡然,盱盱然;酒食聲色之中,則瞞瞞然,瞑瞑然;禮節之中,則疾疾然,訾訾然;勞苦事業之中,則儢儢然,離離然,偷儒而罔,無廉恥而忍謑詬。是學者之嵬也。
新字:吾語汝學者之嵬容:其冠絻,其纓禁緩,其容簡連;填填然,狄狄然,莫莫然,瞡瞡然,瞿瞿然,尽尽然,盱盱然;酒食声色之中,則瞞瞞然,瞑瞑然;礼節之中,則疾疾然,訾訾然;労苦事業之中,則儢儢然,離離然,偷儒而罔,無廉恥而忍謑詬。是學者之嵬也。
書き下し
吾汝(なんじ)に學者の嵬容(かいよう)を語らん。其の冠は絻(べん)にして、其の纓(えい)は禁(た)えて緩く、其の容は簡連なり。填填然(てんてんぜん)たり、狄狄然(てきてきぜん)たり、莫莫然たり、瞡瞡然(きぎぜん)たり、瞿瞿然(くくぜん)たり、盡盡然(じんじんぜん)たり、盱盱然(くくぜん)たり。酒食聲色の中に在れば、則ち瞞瞞然(まんまんぜん)たり、瞑瞑然たり。禮節の中に在れば、則ち疾疾然たり、訾訾然(ししぜん)たり。勞苦事業の中に在れば、則ち儢儢然(りょりょぜん)たり、離離然たり。偷儒(とうじゅ)にして罔(あざむ)き、廉恥無くして謑詬(けいこう)を忍ぶ。是れ學者の嵬なり。
現代語訳
わたしは君たちに、えせ学者の奇矯なありさまを語ろう。冠はだらしなくかぶり、あごひもはゆるみきり、物腰はぞんざいである。もったいぶって重々しく構えたかと思えば、そわそわと落ち着きなく飛び跳ね、ぼんやりと気の抜けた顔をし、こせこせと小さなことをのぞきこみ、きょろきょろとあたりをうかがい、心づかいを使い果たしたようにやつれ、目だけはぎょろりと見開いている。酒や食事や音楽や女色の場では、とろんとして目もくらみ、うっとりと我を忘れる。ところが礼儀作法の場になると、うんざりと嫌がり、ぶつぶつと不平を言う。骨の折れる仕事の場になると、いやいやとぐずり、そそくさとその場を離れる。怠けて人をごまかし、恥を知らず、人からののしられても平気でいる。これがえせ学者の奇矯なありさまである。
解説
前段の士君子のたたずまいと対をなす、痛烈な戯画です。荀子は擬態語を畳みかけて、学問をしていると称する者の醜さを描き出します。冠はだらしなく、あごひもはゆるみ、態度はぞんざい。もったいぶるかと思えば落ち着きなく動き回り、目だけはきょろきょろしている。そして決定的なのは、場面ごとの態度の変わりようです。酒宴や享楽の場ではとろけるように没入し、礼儀の場では嫌がって不平を言い、骨の折れる仕事となるとぐずって逃げる。学問の看板を掲げながら、楽なことにだけ全力なのです。荀子が本当に非難しているのは、外見のだらしなさそのものではなく、その根にある都合のよい使い分けでしょう。楽しいときだけ本気を出し、面倒なときは看板を下ろす。そういう姿は、周囲にはっきり見えています。姿勢と態度は、隠しているつもりでも語ってしまうのです。