荀子 / 非相篇
談說之術:矜莊以蒞之,端誠以處之,堅彊以持之,分別以喻之,譬稱以明之,欣驩芬薌以送之,寶之,珍之,貴之,神之。如是則說常無不受。雖不說人,人莫不貴。夫是之謂為能貴其所貴。傳曰:「唯君子為能貴其所貴。」此之謂也。
新字:談説之術:矜荘以蒞之,端誠以処之,堅彊以持之,分別以喻之,譬稱以明之,欣驩芬薌以送之,宝之,珍之,貴之,神之。如是則説常無不受。雖不説人,人莫不貴。夫是之謂為能貴其所貴。伝曰:「唯君子為能貴其所貴。」此之謂也。
書き下し
談説の術は、矜荘(きょうそう)以て之に蒞(のぞ)み、端誠以て之に処り、堅彊(けんきょう)以て之を持し、分別以て之を喩(さと)し、譬称(ひしょう)以て之を明らかにし、欣驩芬薌(きんかんふんきょう)以て之を送り、之を宝とし、之を珍とし、之を貴び、之を神とす。是くの如くなれば則ち説は常に受けられざる無し。人を説(よろこ)ばしめずと雖も、人貴ばざるは莫し。夫れ是れを之れ能く其の貴ぶ所を貴ぶと謂う。伝に曰く、「唯だ君子のみ能く其の貴ぶ所を貴ぶと為す」と。此れの謂いなり。
現代語訳
人に語り説く技術とはこうである。おごそかで真剣な態度で臨み、まっすぐな誠意をもって構え、揺るがぬ強さでその主張を保ち、筋道を分けて相手に分からせ、たとえを用いて明らかにし、喜びと親しみをこめて言葉を送り出す。そして自分の語る内容を宝のように扱い、珍しいもののように扱い、貴いものとして扱い、神聖なものとして扱う。このようであれば、その説は必ず受け入れられる。たとえ相手を喜ばせることができなくても、人はその人を貴ばずにはいられない。これを、自分の貴ぶものを真に貴ぶことができる、というのである。古い書物にいう、「ただ君子だけが、自分の貴ぶものを真に貴ぶことができる」と。まさにこのことを言うのである。
解説
前の段の「説得は難しい」を受けて、ここでは具体的な話し方の術が並びます。おごそかな態度で臨み、誠実に構え、揺るがぬ強さで主張を保ち、筋道を分けて説明し、たとえを使って分かりやすくし、喜びと親しみをこめて言葉を送り出す。この順序自体が、そのまま話し方の型になっています。そして最後に荀子が強調するのは、自分の語る内容を宝のように、貴いものとして扱えということです。語り手が自分の言葉を軽く扱えば、聞き手もそれを軽く受け取ります。逆に、本当に大切にしているものを大切に語れば、たとえその場で相手を喜ばせられなくても、人はその姿勢を尊敬せずにはいられません。プレゼンでも報告でも、テクニック以前に、自分がその内容をどれだけ本気で貴んでいるか。それが伝わり方を決めるのだと、この段は教えてくれます。