荀子 / 栄辱篇
有狗彘之勇者,有賈盜之勇者,有小人之勇者,有士君子之勇者。爭飲食,無廉恥,不知是非,不辟死傷,不畏眾彊,牟牟然惟利飲食之見,是狗彘之勇也。為事利,爭貨財,無辭讓,果敢而振,猛貪而戾,牟牟然惟利之見,是賈盜之勇也。輕死而暴,是小人之勇也。義之所在,不傾於權,不顧其利,舉國而與之不為改視,重死持義而不橈,是士君子之勇也。
新字:有狗彘之勇者,有賈盗之勇者,有小人之勇者,有士君子之勇者。争飲食,無廉恥,不知是非,不辟死傷,不畏衆彊,牟牟然惟利飲食之見,是狗彘之勇也。為事利,争貨財,無辞譲,果敢而振,猛貪而戻,牟牟然惟利之見,是賈盗之勇也。軽死而暴,是小人之勇也。義之所在,不傾於権,不顧其利,舉国而与之不為改視,重死持義而不橈,是士君子之勇也。
書き下し
狗彘(くてい)の勇なる者有り、賈盗(ことう)の勇なる者有り、小人の勇なる者有り、士君子の勇なる者有り。飲食を争い、廉恥無く、是非を知らず、死傷を辟(さ)けず、衆彊(しゅうきょう)を畏れず、牟牟(ぼうぼう)然として惟だ利と飲食とのみ之れ見るは、是れ狗彘の勇なり。事の利を為し、貨財を争い、辞譲無く、果敢にして振るい、猛貪にして戻(もと)り、牟牟然として惟だ利のみ之れ見るは、是れ賈盗の勇なり。死を軽んじて暴なるは、是れ小人の勇なり。義の在る所、権に傾かず、其の利を顧みず、国を挙げて之に与うるも視を改めず、死を重んじ義を持して橈(たわ)まざるは、是れ士君子の勇なり。
現代語訳
犬や豚の勇気があり、商人や盗人の勇気があり、小人の勇気があり、士君子の勇気がある。飲み食いを奪い合い、恥を知らず、善悪の区別もつかず、傷つくことも死ぬことも避けず、大勢や強い相手も恐れず、ただがつがつと利益と食い物しか目に入らない。これが犬や豚の勇気である。事業の利益をはかり、財貨を奪い合い、譲るということがなく、思い切りよく暴れ、荒々しく貪欲で道理に背き、ただがつがつと利益しか目に入らない。これが商人や盗人の勇気である。命を軽んじて乱暴に振る舞う。これが小人の勇気である。正義のあるところに立ち、権力になびかず、自分の利益を顧みず、国を丸ごと与えると言われても顔色を変えず、命を大切にしながら義を守り抜いて曲がらない。これが士君子の勇気である。
解説
この章句が説くこと
関連する章句
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『文武訓』武訓上一張南軒曰く、君子は難を避けず。亦難に預からず。此意は、不慮にのがれがたき難に臨みて、其場をはづして身をのがるるは怯し、義にあらず。是難を去らざるなり。難にあふとも、難を避けて身をのがるべからず。又、我が身にあづからざる事にわざと出合ひて、難にあづかるは愚なり。此二は共に理にあたらず、勇にあらず。されば身を捨つることはやすけれど、捨ててかひありて理にあたることはかたし。道理にそむきて、死ぬまじき時に死し、あたら命をすつるは愚なりといふべし。死ぬべき時に死なざるは、不義といふ故に、死ぬべからざる時に死して身を失ひ、死ぬべき時に死なずして義を失ふも、共に勇にあらず、理にそむけり。
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『文武訓』武訓上一生れつきに勇怯あり。勇に血気の勇あり、義理の勇あり。血気の勇は、つよきをやぶりかたきをくだく事すぐれたり。されど気つよきのみにて義なければ、節を守らずたのもしげなし。義理の勇は、節義を守りて、大節にのぞみて義を変ぜず、たのもし。たとへば、犬にも勇犬あり義犬あり。勇犬はむかふ所はたらきつよし。されどもあら野猪出でいかれば、身を引きてのがる。義犬は、つねの時は悪性ならず、盗みせず、人をおそる。けものにむかひてはたらき勇大に及ばざれど、たけくいかれる猪にあひても逃げず。人の主君のために、節を守るが如し。
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論語・陽貨篇子路曰く、「君子は勇を尚ぶか。」子曰く、「君子は義以て上と為す。君子勇有りて義無ければ乱を為し、小人勇有りて義無ければ盗を為す。」
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『武士道』第四章 勇・敢爲堅忍の精神・義を為すは勇なり勇もし義に由らずんば、即ち徳たるに値ひせず。孔子は論語にて、其常とする、消極よりして勇の定義を下し、『義を見て為さざるは勇無きなり』と説きしが、之を積極に換言すれば、則ち『義を為すは勇なり』となる。危を求め、命を殆くし、死の口に馳する事、人の或は之を以て勇に擬するあり。武人の如きは、誤つてシェイクスピアの所謂『庶出の勇』たる、暴虎憑河、死して悔いざる者を賛すと雖、ひとり武士道は然らず、死すべからずして死するを犬死と賤めたり。水戸の義公はプラトーの名さへ耳にせざりき。されば此哲人が勇を称して、『恐るべきものと、恐るべからざるものとを弁識することなり』と云へるが如きは、固より之を学びたること無し。然るに義公は曰へり、『戦に臨んで身を捨つること難からず、田夫野人と雖、之を能くす。
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啓発録・振氣人々其心に感じ、其義勇に畏候へども、今の士は勇はなし、義は薄し、謀略は足らず、迚も千兵万馬の中に切り入り、縦横無碍に駆廻る事はかなふまじ。況んや帷幄の中に在て、運籌決勝之大勲は望むべき所にあらず。
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『慎思録』巻之五中華の俗、振古君を諫めて命を致す者、相踵ぎて絶えず。刀鋸前に在り、鼎鑊後に在りと雖も、敢へて其の死を畏れざる者は、何ぞや。其の俗義を尚び、且つ文学有りて、諫諍の方を知ればなり。本邦の俗、古来戦死を軽んずる者多し。鋒鏑羅列し、元を喪ふこと須臾に在りと雖も、敢へて其の身を惜しまざる者は、何ぞや。其の俗勇を好みて、名節を尚べばなり。倭漢気概を尚びて、其の死を惜しまざることは同じくして、死する所の地の異なる者は、他無し。俗尚の義を好みて学有ると、勇を好みて気を尚ぶとの同じからざるに因るなり。
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