荀子 / 不苟篇
君子易知而難狎,易懼而難脅,畏患而不避義死,欲利而不為所非,交親而不比,言辯而不辭,蕩蕩乎其有以殊於世也。
新字:君子易知而難狎,易懼而難脅,畏患而不避義死,欲利而不為所非,交親而不比,言辯而不辞,蕩蕩乎其有以殊於世也。
書き下し
君子は知り易くして狎れ難く、懼れ易くして脅し難く、患いを畏れて義に死するを避けず、利を欲して非とする所を為さず、交わり親しみて比せず、言い弁じて辞せず、蕩蕩乎として其れ以て世に殊なる有り。
現代語訳
君子は、人柄が分かりやすいけれども、なれなれしくはさせない。おそれ慎むところはあるが、脅しには屈しない。災いを恐れはするが、道義のために死ぬべき場面から逃げはしない。利益は欲しいが、間違っていると分かっていることはしない。人と親しく交わるが、徒党は組まない。よく弁じて説くが、口先だけの飾り言葉は使わない。その心はゆったりと広く、そこが世間の人とはっきり違うところである。
解説
君子の人物像を、六つの対句でくっきり描いた短い一段です。ここに並ぶのはどれも「Aではあるが、Bにはならない」という形。分かりやすいが軽んじられない、慎重だが脅しに折れない、死は怖いが義から逃げない、利は欲しいが不正はしない、親しいが馴れ合わない、雄弁だが口先だけではない。共通しているのは、人間らしい感情を否定していない点です。荀子は恐れも欲も認めたうえで、それに引きずられて一線を越えないことを君子の条件としています。感情をなくすのではなく、感情を持ったまま踏みとどまる。職場でも、good personであろうとして誰にでも同調してしまう人は、実は「親しむ」ではなく「比す(徒党を組む)」に傾いています。親しさと馴れ合い、慎重さと臆病、この境目を自分の中に一本引いておくことが、周囲との違いを生みます。