荀子 / 勧学篇
學莫便乎近其人。禮樂法而不說,詩書故而不切,春秋約而不速。方其人之習君子之說,則尊以遍矣,周於世矣。故曰:學莫便乎近其人。
新字:學莫便乎近其人。礼楽法而不説,詩書故而不切,春秋約而不速。方其人之習君子之説,則尊以遍矣,周於世矣。故曰:學莫便乎近其人。
書き下し
学は其の人に近づくより便なるは莫し。礼楽は法として説かず、詩書は故にして切ならず、春秋は約にして速ならず。方に其の人の君子の説を習うに、則ち尊びて以て遍く、世に周し。故に曰く、学は其の人に近づくより便なるは莫しと。
現代語訳
学問には、優れた人に近づいて学ぶことほど手っ取り早いものはない。礼や楽は規範を示すが、その理由までは説き明かしてくれない。詩経や書経は昔の記録であって、今の状況にぴたりと切実に当てはまるわけではない。春秋は簡潔すぎて、すぐには理解が及ばない。しかし、君子の教えを身につけたその人(師)について学べば、教養は尊く広く行きわたり、世の中に通用するものになる。だから言うのだ、学問には優れた人に近づくことほど便利なものはない、と。
解説
前段までの書物中心の話から一転、「生きた師に学べ」と説く段です。荀子は書物の限界を正直に挙げます。礼や楽は「こうせよ」と規範は示すが、なぜそうかまでは語らない。詩書は昔の記録で、今の状況に切実には響かない。春秋は簡潔すぎて呑み込むのに時間がかかる。つまり古典は独学だと、理由・実感・スピードの面でどうしても隔たりがある。それを一気に埋めてくれるのが「其の人=優れた師」に近づくことだ、というのが結論です。師は、書物には書かれない「なぜ」「どう使うか」を、その人自身の姿で見せてくれる。現代でいえば、本や動画で独学するより、その道の実践者のそばで学ぶほうが習得が速い、ということ。「近くにいること」自体が最良の教材だ、という荀子の学び方の急所です。