荀子 / 勧学篇
《詩》曰:「嗟爾君子,無恆安息。靖共爾位,好是正直。神之聽之,介爾景福。」神莫大於化道,福莫長於無禍。
新字:《詩》曰:「嗟爾君子,無恒安息。靖共爾位,好是正直。神之聴之,介爾景福。」神莫大於化道,福莫長於無禍。
書き下し
詩に曰く、「嗟あ爾君子、恒に安息すること無かれ。爾の位を靖んじ共し、是の正直を好め。神之を聴きて、爾に景福を介けん」と。神は道に化するより大なるは莫く、福は禍無きより長きは莫し。
現代語訳
『詩経』に、「ああ君子よ、いつも安逸をむさぼってはならない。自分の職分を安んじ慎み、まっすぐな正しさを好め。神はこれを聞きとどけ、お前に大きな幸いを授けるだろう」とある。神妙な力は、道によって自分を作り変えることより大きいものはなく、幸福は、災いが無いことより長続きするものはない。
解説
『詩経』を引いて、学びと修養を「安逸への戒め」として語る一段です。「恒に安息すること無かれ」——いつも楽をしようとするな、というのが核心。自分の持ち場を大切にし、まっすぐさを好んで生きよ、そうすれば大きな幸いが来る、と説きます。そのうえで荀子は独自の解釈を加えます。いちばん霊妙なのは超自然の奇跡ではなく「道によって自分を変えていくこと」であり、いちばん長続きする幸福は、はでな成功ではなく「災いが無いこと」だと。地味でも堅実に自分を正していくことが、実は最強の運の作り方だ、という現実的な幸福観です。派手な一発より、大過なく続くことの価値を説いた言葉として、今の私たちにも響きます。