貞観政要 / 慎終
疏奏,太宗謂徵曰:「人臣事主,順旨甚易,忤情尤難。公作朕耳目股肱,常論思獻納。朕今聞過能改,庶幾克終善事。若違此言,更何顏與公相見?復欲何方以理天下?自得公疏,反復研尋,深覺詞強理直,遂列為屏障,朝夕瞻仰。又尋付史司,冀千載之下識君臣之義。」乃賜徵黃金十斤,廄馬二匹。
新字:疏奏,太宗謂徴曰:「人臣事主,順旨甚易,忤情尤難。公作朕耳目股肱,常論思献納。朕今聞過能改,庶幾克終善事。若違此言,更何顏与公相見?復欲何方以理天下?自得公疏,反復研尋,深覺詞強理直,遂列為屏障,朝夕瞻仰。又尋付史司,冀千載之下識君臣之義。」乃賜徴黄金十斤,廄馬二匹。
書き下し
疏奏す。太宗徴に謂いて曰く、「人臣の主に事うるは、旨に順うは甚だ易く、情に忤(さか)らうは尤も難し。公は朕の耳目股肱と作り、常に論思献納す。朕は今、過ちを聞きて能く改む。庶幾(ちか)くは克く善事を終えん。若し此の言に違わば、更に何の顔ありて公と相い見えん。復た何の方を以て天下を理めんと欲す。公が疏を得てより、反復研尋す。深く詞は強く理は直きを覚ゆ。遂に列して屏障と為し、朝夕に瞻仰す。又た尋いで史司に付す。千載の下、君臣の義を識らんことを冀う」と。乃ち徴に黄金十斤、廄馬二匹を賜う。
現代語訳
上奏があった。太宗は魏徴に言った。「臣下が主君に仕えるのに、意に従うのは易しく、情に逆らうのは最も難しい。あなたは私の耳目であり手足となり、常に考えて意見を献じてくれる。私は今、過ちを聞いて改められる。善き事を全うできるだろう。もしこの言葉に背けば、どんな顔をしてあなたと会えようか。どんな方法で天下を治められようか。あなたの上奏を得てから、繰り返し読み込んだ。まことに言葉は強く道理はまっすぐだと感じた。そこで屏風に貼り連ね、朝夕に仰ぎ見ている。また史官に渡した。千年の後、君臣の義を知ってほしいからだ」。そして魏徴に黄金十斤、厩の馬二頭を賜った。
解説
十の欠点を並べられた皇帝が、その文章を屏風に貼り、朝夕仰ぎ見ました。そして史官に渡し、後世に残せと命じました。自分の欠点を並べた文書を、記録に残す。「千年の後、君臣の義を知ってほしい」。批判を受け入れるとは、ここまでのことを言うのです。