貞観政要 / 慎終
臣誠愚鄙,不達事機,略舉所見十條,輒以上聞聖聽。伏願陛下采臣狂瞽之言,參以芻蕘之議,冀千慮一得,袞職有補,則死日生年,甘從斧鉞。
新字:臣誠愚鄙,不達事機,略舉所見十条,輒以上聞聖聴。伏願陛下采臣狂瞽之言,参以芻蕘之議,冀千慮一得,袞職有補,則死日生年,甘従斧鉞。
書き下し
臣は誠に愚鄙にして、事機に達せず。略ぼ所見十条を挙げ、輒(すなわ)ち以て聖聴に上聞す。伏して願わくは陛下、臣の狂瞽の言を采り、参ずるに芻蕘の議を以てせよ。千慮の一得を冀(こいねが)い、袞職に補う有らば、則ち死日も生年なり。甘んじて斧鉞に従わん。
現代語訳
臣はまことに愚かで卑しく、事の機微に通じていません。おおまかに見たところ十条を挙げ、お耳に入れました。伏して願わくは陛下、臣の狂った盲言を採り、庶民の議として参照してください。千に一つの得を願い、天子の職を補えれば、死ぬ日も生きた年と同じです。甘んじて斧鉞を受けましょう。
解説
これまで十の指摘を並べ終えた魏徴の締めくくりの言葉です。自分を「愚かで卑しい者」とへりくだりながら、それでも十の意見を包み隠さず申し上げました。そして最後にこう言います。「もしこの中の千に一つでもお役に立つことがあれば、死ぬ日も生きた年月と同じです。処罰されることも喜んでお受けします」。これだけ厳しい指摘を並べれば、機嫌を損ねて処罰されてもおかしくありません。それを承知のうえで、あえて言い切っているのです。命がけで発した言葉だからこそ、相手の胸に届きます。逆に言えば、何のかかわりも背負わずに口先だけで意見を述べても、相手の心は動きません。家庭でも友人関係でも、本当に大切な忠告というのは、嫌われる覚悟や関係が壊れる覚悟があってはじめて相手に伝わるものなのです。
この章句が説くこと
則死日生年甘従斧鉞十条を挙げ切る覚悟が重さを保証する