貞観政要 / 慎終
陛下初登大位,高居深視,事惟清靜,心無嗜欲,內除畢弋之物,外絕畋獵之源。數載之後,不能固志,雖無十旬之逸,或過三驅之禮。遂使盤遊之娛,見譏於百姓,鷹犬之貢,遠及於四夷。或時教習之處,道路遙遠,侵晨而出,入夜方還。以馳騁為歡,莫慮不虞之變,事之不測,其可救乎?此其漸不克終七也。
新字:陛下初登大位,高居深視,事惟清静,心無嗜欲,内除畢弋之物,外絶畋猟之源。数載之後,不能固志,雖無十旬之逸,或過三駆之礼。遂使盤遊之娯,見譏於百姓,鷹犬之貢,遠及於四夷。或時教習之処,道路遥遠,侵晨而出,入夜方還。以馳騁為歓,莫慮不虞之変,事之不測,其可救乎?此其漸不克終七也。
書き下し
陛下は初めて大位に登るや、高く居りて深く視る。事は惟れ清静。心に嗜欲無し。内は畢弋の物を除き、外は畋猟の源を絶つ。数載の後、志を固くする能わず。十旬の逸無しと雖も、或いは三駆の礼に過ぐ。遂に盤遊の娯しみをして、譏りを百姓に見(あら)わさしむ。鷹犬の貢、遠く四夷に及ぶ。或いは時に教習の処、道路は遥遠なり。晨を侵して出で、夜に入りて方(はじ)めて還る。馳騁を以て歓と為し、不虞の変を慮る莫し。事の測られざる、其れ救うべけんや。此れ其の漸く克く終えざるの七なり。
現代語訳
陛下が初めて大位に登られた時、高く居り深く見つめられた。事はひたすら清らかで静か、心に欲望はなかった。内では狩りの道具を除き、外では狩猟の源を絶ちました。数年の後、志を固く保てなくなった。十旬にわたる遊興こそないものの、三度追う狩りの礼を超えることがある。ついに遊びの楽しみが、民に謗られています。鷹や犬の献上は、遠く異民族にまで及ぶ。時には訓練の場が、道のりも遠い。夜明け前に出て、夜になってようやく帰られる。馬を駆ることを喜びとし、不測の変を慮られない。事が測り知れないものになれば、救えましょうか。これが、次第に終わりを全うできなくなっている第七です。
解説
この章句が説くこと
関連する章句
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貞観政要・慎終陛下は貞観の初め、己を損じて以て物を利す。今日に至りては、欲を縦にして以て人を労す。卑倹の跡は歳ごとに改まり、驕侈の情は日ごとに異なる。人を憂うるの言は口に絶えずと雖も、而して身を楽しましむるの事は実に心に切なり。或いは時に営む所有らんと欲し、人の諫を致すを慮り、乃ち云う、「若し此を為さずんば、我が身に便ならず」と。人臣の情、何ぞ復た争うべけんや。此れ直だ意は諫者の口を杜(ふさ)ぐに在り。豈に善を択びて行う者と曰わんや。此れ其の漸く克く終えざるの三なり。
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貞観政要・慎終貞観の初め、賢を求むること渇するが如し。善人の挙ぐる所、信じて之に任じ、其の長ずる所を取る。恒に及ばざるを恐る。近歳より以来、心に由りて好悪す。或いは衆善挙げて之を用う。或いは一人毀りて之を棄つ。或いは積年任じて之を用う。或いは一朝疑いて之を遠ざく。夫れ行いに素履有り、事に成跡有り。毀る所の人、未だ必ずしも挙ぐる所より信ずべからず。積年の行いは、応(まさ)に一朝に頓(にわか)に失うべからず。君子の懐は、仁義を蹈みて大徳を弘む。小人の性は、讒佞を好みて以て身の謀と為す。陛下は其の根源を審察せずして、軽々しく之が臧否(ぞうひ)を為す。是れ道を守る者をして日々に疎ならしめ、幹求する者をして日々に進ましむ。所以に人は苟も免るるを思い、能く力を尽くす莫し。此れ其の漸く克く終えざるの六なり。
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貞観政要・慎終陛下は貞観の初め、無為無欲なり。清静の化は、遠く遐荒に被る。之を今に考うるに、其の風は漸く墜つ。言を聴けば則ち遠く上聖に超ゆ。事を論ずれば則ち未だ中主を逾えず。何を以て之を言うや。漢の文・晋の武は倶に上哲に非ず。漢の文は千里の馬を辞し、晋の武は雉頭の裘を焚く。今は則ち駿馬を万里に求め、珍奇を域外に市(か)う。怪を道路に取り、軽んぜらるるを戎狄に見(あら)わす。此れ其の漸く克く終えざるの一なり。
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貞観政要・慎終『書』に曰く、「無益を作して有益を害せずんば、功は乃ち成る。異物を貴びて用物を賤しまずんば、人は乃ち足る。犬馬は其の土性に非ざれば畜わず。珍禽奇獣は国に育(やしな)わず」と。陛下は貞観の初め、動もすれば堯・舜に遵う。金を捐(す)て璧を抵(なげう)ち、朴に反り淳に還る。頃年より以来、奇異を好尚す。得難きの貨は、遠しとして臻(いた)らざる無し。珍玩の作は、時として能く止まる無し。上は奢靡を好みて下の敦朴を望むは、未だ之れ有らざるなり。末作滋(ますま)す興りて、豊実を求む。其の得べからざること亦た已に明らかなり。此れ其の終に克く終えざるの五なり。
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貞観政要・慎終「傲は長ずべからず。欲は縦にすべからず。楽は極むべからず。志は満たすべからず」と。四者は、前王の福を致す所以にして、通賢は以て深き誡と為す。陛下は貞観の初め、孜孜として怠らず、己を屈して人に従い、恒に足らざるが若し。頃年より以来、微しく矜放有り。功業の大なるを恃み、意は前王を蔑(なみ)す。聖智の明を負い、心は当代を軽んず。此れ傲の長ずるなり。為さんと欲する所有らば、皆な意を遂ぐるを取る。縦い或いは情を抑えて諫に従うも、終に是れ懐を忘るる能わず。此れ欲の縦なるなり。志は嬉遊に在り、情に厭倦無し。未だ全くは政事を妨げずと雖も、復た心を治道に専らにせず。此れ楽の将に極まらんとするなり。率土は乂安、四夷は款服す。仍お遠く士馬を労し、罪を遐裔に問う。此れ志の将に満たんとするなり。親狎する者は旨に阿(おもね)りて肯えて言わず。疎遠なる者は威を畏れて敢えて諫むる莫し。積みて已まずんば、将に聖徳を虧かんとす。此れ其の漸く克く終えざるの九なり。
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貞観政要・慎終臣は自古の帝王の図を受け鼎を定むるを観るに、皆な之を万代に伝え、厥(そ)の孫謀を貽(のこ)さんと欲す。故に其の巌廊に垂拱し、政を天下に布く。其の道を語るや、必ず淳朴を先にして浮華を抑う。其の人を論ずるや、必ず忠良を貴びて邪佞を鄙(いや)しむ。制度を言うや、則ち奢靡を絶ちて倹約を崇ぶ。物産を談ずるや、則ち穀帛を重んじて珍奇を賤しむ。然れども命を受くるの初めは、皆な之に遵いて以て治を成す。稍(やや)安んずるの後は、多く之に反して俗を敗る。其の故は何ぞや。豈に万乗の尊に居り、四海の富を有し、言を出して己に逆らう莫く、為す所は人必ず従うを以て、公道は私情に溺れ、礼節は嗜欲に虧くるが故ならずや。語に曰く、「之を知るは難きに非ず。之を行うは難しと為す。之を行うは難きに非ず。之を終うるは斯れ難し」と。言う所は信なり。
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