貞観政要 / 征伐
貞觀已來,二十有餘載,風調雨順,年登歲稔,人無水旱之弊,國無饑饉之災。昔漢武帝,守文之常主,猶登刻玉之符;齊桓公,小國之庸君,尚塗泥金之事。望陛下推功損己,讓德不居。億兆傾心,猶闕告成之禮;雲、亭佇謁,未展升中之儀。此之功德,足以咀嚼百王,網羅千代者矣。然古人有云:「雖休勿休。」良有以也。守初保末,聖哲罕兼。是知業大者易驕,願陛下難之;善始者難終,願陛下易之。
新字:貞観已来,二十有余載,風調雨順,年登歲稔,人無水旱之弊,国無饑饉之災。昔漢武帝,守文之常主,猶登刻玉之符;斉桓公,小国之庸君,尚塗泥金之事。望陛下推功損己,譲徳不居。億兆傾心,猶闕告成之礼;雲、亭佇謁,未展升中之儀。此之功徳,足以咀嚼百王,網羅千代者矣。然古人有云:「雖休勿休。」良有以也。守初保末,聖哲罕兼。是知業大者易驕,願陛下難之;善始者難終,願陛下易之。
書き下し
貞観已来、二十有余載。風は調い雨は順い、年は登り歳は稔る。人に水旱の弊無く、国に饑饉の災無し。昔、漢の武帝は、守文の常主なり。猶お刻玉の符に登る。斉の桓公は、小国の庸君なり。尚お泥金の事を塗る。望むらくは陛下、功を推して己を損じ、徳を譲りて居らざれ。億兆は心を傾くるも、猶お告成の礼を闕(か)く。雲・亭は謁を佇(ま)つも、未だ升中の儀を展べず。此の功徳は、以て百王を咀嚼し、千代を網羅するに足る者なり。然れども古人に云える有り、「休(よ)しと雖も休しとする勿かれ」と。良に以有るなり。初めを守り末を保つは、聖哲も罕(まれ)に兼ぬ。是れ知る、業の大なる者は驕り易し。願わくは陛下、之を難しとせよ。善く始むる者は終わり難し。願わくは陛下、之を易しとせよ。
現代語訳
貞観以来、二十余年。風は調い雨は順い、毎年豊作です。人に水害や旱魃の弊はなく、国に飢饉の災いはありません。昔、漢の武帝は先代の法を守るだけの平凡な君主でしたが、それでも封禅の儀を行いました。斉の桓公は小国の凡庸な君主でしたが、それでも封禅を思いました。願わくは陛下、功を人に譲り、自らを損じ、徳を譲って驕らないでください。億兆の民が心を傾けても、なお功成ったことを天に告げる礼を欠いています。泰山は拝謁を待っていますが、まだ儀式は行われていません。この功徳は、百王を凌ぎ、千代を網羅するに足ります。しかし古人は「良しと言われても、良しとするな」と言いました。まことに理由があります。初めを守り終わりを保つことは、聖哲でもめったに兼ねられません。だから、事業の大きい者は驕りやすいと分かります。願わくは陛下、これを難しいこととしてください。善く始めた者は終わりを全うしがたい。願わくは陛下、これを易しいこととしてください。