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貞観政要 / 貢賦

貞觀十八年,太宗將伐高麗,其莫離支遣使貢白金。黃門侍郎褚遂良諫曰:「莫離支虐殺其主,九夷所不容,陛下以之興兵,將事吊伐,為遼東之人報主辱之恥。古者討弒君之賊,不受其賂。昔宋督遺魯君以郜鼎,桓公受之於大廟,臧哀伯諫曰:『君人者將昭德塞違,今滅德立違,而置其賂器於大廟,百官象之,又何誅焉?武王克商,遷九鼎於雒邑,義士猶或非之,而況將昭違亂之賂器置諸大廟,其若之何?』夫《春秋》之書,百王取則,若受不臣之筐篚,納弒逆之朝貢,不以為愆,將何致伐?臣謂莫離支所獻,自不合受。」太宗從之。

新字:貞観十八年,太宗将伐高麗,其莫離支遣使貢白金。黄門侍郎褚遂良諫曰:「莫離支虐殺其主,九夷所不容,陛下以之興兵,将事吊伐,為遼東之人報主辱之恥。古者討弒君之賊,不受其賂。昔宋督遺魯君以郜鼎,桓公受之於大廟,臧哀伯諫曰:『君人者将昭徳塞違,今滅徳立違,而置其賂器於大廟,百官象之,又何誅焉?武王克商,遷九鼎於雒邑,義士猶或非之,而況将昭違乱之賂器置諸大廟,其若之何?』夫《春秋》之書,百王取則,若受不臣之筐篚,納弒逆之朝貢,不以為愆,将何致伐?臣謂莫離支所献,自不合受。」太宗従之。

書き下し

貞観十八年、太宗将に高麗を伐たんとす。其の莫離支、使を遣わして白金を貢す。黄門侍郎褚遂良諫めて曰く、「莫離支は其の主を虐殺す。九夷の容れざる所なり。陛下は之を以て兵を興し、将に吊伐を事とし、遼東の人の為に主辱の恥に報いんとす。古者、君を弑するの賊を討つに、其の賂を受けず。昔、宋の督は魯君に遺(おく)るに郜鼎(こうてい)を以てす。桓公之を大廟に受く。臧哀伯諫めて曰く、『人に君たる者は将に徳を昭らかにし違を塞がんとす。今、徳を滅し違を立て、而して其の賂器を大廟に置く。百官之に象(かたど)らば、又た何ぞ誅せんや。武王、商に克ち、九鼎を雒邑に遷す。義士すら猶お或いは之を非とす。而るに況んや将に違乱の賂器を昭らかにして諸を大廟に置かんとするをや。其れ之を若何せん』と。夫れ『春秋』の書は、百王の則を取る。若し不臣の筐篚(きょうひ)を受け、弑逆の朝貢を納れて、以て愆(あやまち)と為さずんば、将た何ぞ伐を致さんや。臣謂えらく、莫離支の献ずる所は、自ら受くるに合わず」と。太宗之に従う。

現代語訳

貞観十八年、太宗が高句麗を討とうとした。その莫離支が使者を遣わして白金を献上した。黄門侍郎の褚遂良が諫めて言った。「莫離支は自分の主君を虐殺しました。諸国の容れないところです。陛下はこれを理由に兵を挙げ、罪を問い、遼東の人のために主君が辱められた恥に報いようとされる。昔、君を弑した賊を討つ時、その賄賂を受けませんでした。昔、宋の華督が魯君に郜の鼎を贈りました。桓公はこれを宗廟に受け入れました。臧哀伯が諫めて言いました。『君主たる者は徳を明らかにし、背きを塞ぐものです。今、徳を滅ぼし背きを立て、その賄賂の器を宗廟に置く。百官がこれに倣えば、何を罰するのですか。武王が商に勝ち、九鼎を雒邑に移した時、義士でさえこれを非としました。まして背き乱れた賄賂の器を宗廟に置こうとするなど、どうするのですか』と。『春秋』の書は、百王の規範とされます。もし臣下でない者の贈り物を受け、主君殺しの朝貢を納めて、過ちとしないなら、何を理由に討伐するのですか。臣が思いますに、莫離支の献上物は、受けるべきではありません」。太宗はこれに従った。

解説

主君殺しを理由に討伐する、と言いながら、その本人からの贈り物を受け取る。「何を理由に討伐するのですか」。褚遂良の問いは正確です。名分を掲げるなら、その名分に従って振る舞わねばならない。掲げた理由と、実際の行動が食い違えば、名分は嘘になります。

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