貞観政要 / 赦令
貞觀十一年,太宗謂侍臣曰:「詔令格式,若不常定,則人心多惑,奸詐益生。《周易》稱『渙汗其大號』,言發號施令,若汗出於體,一出而不復也。《書》曰:『慎乃出令,令出惟行,弗為反。』且漢祖日不暇給,蕭何起於小吏,制法之後,猶稱畫一。今宜詳思此義,不可輕出詔令,必須審定,以為永式。」
新字:貞観十一年,太宗謂侍臣曰:「詔令格式,若不常定,則人心多惑,奸詐益生。《周易》稱『渙汗其大号』,言発号施令,若汗出於体,一出而不復也。《書》曰:『慎乃出令,令出惟行,弗為反。』且漢祖日不暇給,蕭何起於小吏,制法之後,猶稱画一。今宜詳思此義,不可輕出詔令,必須審定,以為永式。」
書き下し
貞観十一年、太宗侍臣に謂いて曰く、「詔令格式、若し常に定まらずんば、則ち人心多く惑い、奸詐益ます生ず。『周易』に『其の大号を渙汗す』と称す。号を発し令を施すは、汗の体より出づるが若く、一たび出でて復たせざるを言うなり。『書』に曰く、『乃(なんじ)の令を出すを慎め。令出づれば惟れ行う。反すことを為さず』と。且つ漢祖は日に給するに暇あらず。蕭何は小吏より起こる。法を制するの後、猶お画一と称せらる。今、宜しく詳らかに此の義を思い、軽々しく詔令を出すべからず。必ず須らく審定し、以て永式と為すべし」と。
現代語訳
貞観十一年、太宗が側近の臣に言った。「詔と法令が常に定まらなければ、人心は惑い、不正がますます生じる。『周易』に『その大号令を汗のように発する』とある。号令を発するのは、汗が体から出るようなもので、一度出れば戻らないということだ。『書経』に『命令を出すのを慎め。命令が出れば行われる。取り消してはならない』とある。それに漢の高祖は日々忙しかった。蕭何は小役人から身を起こした。法を定めた後は、なお一貫していると称された。今、この意をよく考え、軽々しく詔令を出してはならない。必ず慎重に定め、永久の規範とせよ」。
解説
「号令は、汗のようなもの。一度出れば戻らない」。この比喩が鮮やかです。出した命令は、取り消せません。取り消せば、次から信じられなくなる。だから出す前に、慎重に考える。撤回できると思っていると、軽く出してしまうのです。