貞観政要 / 刑法
貞觀五年,詔曰:「在京諸司,比來奏決死囚,雖云三覆,一日即了,都未暇審思,三奏何益?縱有追悔,又無所及。自今後,在京諸司奏決死囚,宜二日中五覆奏,天下諸州三覆奏。」又手詔敕曰:「比來有司斷獄,多據律文,雖情在可矜而不敢違法,守文定罪,惑恐有冤。自今門下省復有據法合死,而情在可矜者,宜錄狀奏聞。」
新字:貞観五年,詔曰:「在京諸司,比来奏決死囚,雖云三覆,一日即了,都未暇審思,三奏何益?縦有追悔,又無所及。自今後,在京諸司奏決死囚,宜二日中五覆奏,天下諸州三覆奏。」又手詔勅曰:「比来有司断獄,多拠律文,雖情在可矜而不敢違法,守文定罪,惑恐有冤。自今門下省復有拠法合死,而情在可矜者,宜録状奏聞。」
書き下し
貞観五年、詔して曰く、「京に在る諸司、比来、死囚を奏決するに、三覆と云うと雖も、一日にして即ち了(お)わる。都(すべ)て未だ審思するに暇あらず。三奏するも何の益かあらん。縦い追悔有るも、又た及ぶ所無し。今より後、京に在る諸司の死囚を奏決するは、宜しく二日中に五覆奏すべし。天下の諸州は三覆奏せよ」と。又た手詔して敕して曰く、「比来、有司の獄を断ずるに、多く律文に拠る。情は矜れむべきに在りと雖も、敢えて法に違わず。文を守りて罪を定む。惑(うたが)うらくは恐らくは冤有らん。今より門下省の復して、法に拠りて死に合うも、情の矜れむべきに在る者有らば、宜しく状を録して奏聞すべし」と。
現代語訳
貞観五年、詔して言った。「都の諸官庁が、近頃、死刑囚の判決を奏上するのに、三度の再奏と言いながら、一日で終えてしまう。まったく熟慮する暇がない。三度奏上しても何の益があろう。後悔しても、及ばない。今後、都の諸官庁が死刑囚の判決を奏上するには、二日の間に五度再奏せよ。地方の諸州は三度再奏せよ」。また自筆の詔で命じて言った。「近頃、役所が裁判を断じるのに、多くは律の条文に拠る。事情が憐れむべきものでも、あえて法に背かない。条文を守って罪を定める。冤罪があるのではないかと疑う。今後、門下省が再審して、法によれば死罪でも、事情が憐れむべきものがあれば、状況を記録して報告せよ」。
解説
この章句が説くこと
関連する章句
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貞観政要・刑法貞観元年、太宗侍臣に謂いて曰く、「死者は再び生くべからず。法を用うるは務めて寛簡に在り。古人云う、『棺を鬻(ひさ)ぐ者は歳の疫を欲す。人を疾(にく)むに非ず。棺の售(う)るに利あるが故なるのみ』と。今、法司は一獄を核理するに、必ず深刻を求む。其の考課を成さんと欲すればなり。今、何の法を作らば、平允ならしむるを得ん」と。諫議大夫王珪進みて曰く、「但だ公直良善の人を選び、獄を断ずること允当なる者は、秩を増し金を賜わば、即ち奸偽は自ら息(や)まん」と。詔して之に従う。太宗又た曰く、「古者、獄を断ずるに、必ず三槐・九棘の官に訊(と)う。今の三公・九卿は、即ち其の職なり。今より以後、大辟の罪は皆な中書・門下の四品以上及び尚書・九卿をして之を議せしめよ。此くの如くんば、庶(ちか)くは冤濫を免れん」と。是に由りて四年に至るまで、死刑を断ずること、天下に二十九人。幾(ほとん)ど刑措に致る。
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貞観政要・刑法貞観五年、張蘊古は大理丞と為る。相州の人李好徳は素より風疾有り。言は妖妄に渉る。詔して其の獄を鞠せしむ。蘊古言う、「好徳の癲病は徴有り。法として坐するに当たらず」と。太宗、将に寛宥せんことを許す。蘊古は密かに其の旨を報ず。仍お引きて与に博戯す。治書侍御史権万紀之を劾奏す。太宗大いに怒り、東市に斬らしむ。既にして之を悔ゆ。房玄齢に謂いて曰く、「公等は人の禄を食む。須らく人の憂いを憂うべし。事に巨細と無く、咸な当に意を留むべし。今、問わざれば則ち言わず。事を見て都(すべ)て諫諍せず。何の輔弼する所ぞ。蘊古の如きは身は法官と為り、囚と博戯し、朕の言を漏泄す。此れ亦た罪状は甚だ重し。若し常律に拠らば、未だ極刑に至らず。朕は当時盛怒し、即ち処置せしむ。公等は竟に一言無し。所司も又た覆奏せず。遂に即ち之を決す。豈に是れ道理ならんや」と。因りて詔して曰く、「凡そ死刑有らば、即決せしむと雖も、皆な須らく五覆奏すべし」と。五覆奏は、蘊古より始まるなり。又た曰く、「文を守りて罪を定むれば、或いは恐らくは冤有らん。今より以後、門下省の覆するに、法令に拠りて死に合うも情の矜(あわ)れむべき者有らば、宜しく録して奏聞すべし」と。
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貞観政要・公平貞観の初め、志は公道に存す。人に犯す所有らば、一一法に於てす。縦(たと)い時に臨みて処断すること或いは軽重有るも、但だ臣下の執論を見れば、忻然として受納せざる無し。民は罪の私無きを知る。故に甘心して怨まず。臣下は言いて忤(さか)らわざるを見る。故に力を尽くして以て忠を効(いた)す。頃年より以来、意は漸く深刻なり。三面の網を開くと雖も、而して察して淵中の魚を見る。取捨は愛憎に在り、軽重は喜怒に由る。之を愛する者は、罪は重しと雖も強いて之が辞を為す。之を悪む者は、過ちは小なりと雖も深く其の意を探る。法に定科無く、情に任せて以て軽重す。人に執論有らば、之を疑うに阿偽を以てす。故に罰を受くる者は控告する所無く、官に当たる者は敢えて正言する莫し。其の心を服せずして、但だ其の口を窮む。之に罪を加えんと欲せば、其れ辞無からんや。又た五品已上に犯す有らば、悉く曹司をして聞奏せしむ。本と其の情状を察して、哀矜する所有らんと欲す。今は乃ち曲げて小節を求め、或いは其の罪を重くす。人をして攻撃せしめ、惟だ深からざるを恨む。事に重条無くんば、之を法外に求めて加うる所、十に六七有り。故に頃年、犯す者は上に聞こゆるを懼れ、法司に付するを得るを以て、多幸と為す。告訐已(や)まず、窮理息まず。君は上に私し、吏は下に奸なり。細過を求めて大体を忘れ、一罰を行いて衆奸を起こす。此れ乃ち公平の道に背き、泣辜(きゅうこ)の意に乖(そむ)く。其の人和し訟息(や)むを欲するも、得べからざるなり。
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貞観政要・赦令貞観十年、太宗侍臣に謂いて曰く、「国家の法令は、惟だ須らく簡約なるべし。一罪に数種の条を作すべからず。格式既に多くば、官人は尽くは記す能わず。更に奸詐を生ず。若し罪を出さんと欲せば即ち軽き条を引き、若し罪を入れんと欲せば即ち重き条を引く。数々法を変うる者は、実に道理に益あらず。宜しく審細ならしめ、互文を使う毋(な)かれ」と。
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貞観政要・刑法臣聞く、『書』に曰く、「徳を明らかにし罰を慎む」「惟れ刑をこれ恤(あわ)れめ」と。『礼』に云う、「上と為りて事え易く、下と為りて知り易くんば、則ち刑は煩わしからず。上人疑わば則ち百姓惑い、下知り難くんば則ち君長労す」と。夫れ上事え易くんば、則ち下知り易し。君長労せず、百姓惑わず。故に君に一徳有らば、臣に二心無し。上は忠厚の誠を播き、下は股肱の力を竭くす。然る後に太平の基は墜ちず、「康なるかな」の詠は斯に起こる。当今、道は華戎に被り、功は宇宙に高し。思うとして服せざる無く、遠しとして臻(いた)らざる無し。然れども言は簡文を尚び、志は明察に在り。刑賞の用は、未だ尽くさざる所有り。夫れ刑賞の本は、善を勧めて悪を懲らすに在り。帝王の天下と画一を為し、貴賤親疎を以て軽重せざる所以の者なり。今の刑賞は、未だ必ずしも尽くは然らず。或いは屈伸は好悪に在り、或いは軽重は喜怒に由る。喜に遇わば則ち其の情を法中に矜れみ、怒に逢わば則ち其の罪を事外に求む。好む所は則ち皮を鑽(き)りて其の毛羽を出し、悪む所は則ち垢を洗いて其の瘢痕を求む。瘢痕求むべくんば、則ち刑は斯に濫れり。毛羽出すべくんば、則ち賞は因りて謬れり。刑濫れば則ち小人の道長じ、賞謬れば則ち君子の道消ゆ。小人の悪は懲らされず、君子の善は勧められず。而して治安・刑措を望むは、聞く所に非ざるなり。
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貞観政要・刑法貞観十一年、特進魏徴、疏を上りて曰く、
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