貞観政要 / 刑法
太宗嘉之,賜帛三百段,仍授以大理寺丞。
書き下し
太宗之を嘉し、帛三百段を賜う。仍お授くるに大理寺丞を以てす。
現代語訳
太宗はこれをよしとし、絹三百段を賜った。そして大理寺丞に任じた。
解説
太宗はこの『大宝箴』の文章を高く評価し、絹三百段という手厚い褒美を与え、さらに法を扱う大理寺丞という役職まで授けました。文章の見事さを認めて、実際の仕事も任せたのです。しかし張蘊古はこの役職に就いた後、法を扱う役人として重い過ちを犯し、処刑されることになります。立派な言葉を書けることと、その言葉どおりに実際の仕事をやり遂げられることは、まったく別の話だということです。文章の理想を語ることと、日々の現場で正しく行うことの間には、思っている以上に深い溝があります。これは今の暮らしでも同じで、口では立派なことを言えても、実際の子育てや仕事の場面ではうまくいかない人がいます。言葉の見事さだけで人を信じきってしまう危うさを、この一段は教えてくれます。
この章句が説くこと
太宗嘉之賜帛三百段仍授以大理寺丞言葉と行いの溝
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貞観政要・刑法太宗深く嘉して納用す。
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貞観政要・刑法貞観十六年、太宗大理卿孫伏伽に謂いて曰く、「夫れ甲を作る者は其の堅きを欲す。人の傷つくを恐るればなり。箭を作る者は其の鋭きを欲す。人の傷つかざるを恐るればなり。何となれば、各々司存有り、利は称職に在るが故なり。朕は常に法官に刑罰の軽重を問う。毎に法網は往代より寛しと称す。仍お恐る、獄を主る司は、利は人を殺すに在り、人を危うくして自ら達し、以て声価を釣らんことを。今の憂うる所は、正に此に在るのみ。深く宜しく禁止し、務めて寛平に在るべし」と。
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貞観政要・刑法貞観元年、太宗侍臣に謂いて曰く、「死者は再び生くべからず。法を用うるは務めて寛簡に在り。古人云う、『棺を鬻(ひさ)ぐ者は歳の疫を欲す。人を疾(にく)むに非ず。棺の售(う)るに利あるが故なるのみ』と。今、法司は一獄を核理するに、必ず深刻を求む。其の考課を成さんと欲すればなり。今、何の法を作らば、平允ならしむるを得ん」と。諫議大夫王珪進みて曰く、「但だ公直良善の人を選び、獄を断ずること允当なる者は、秩を増し金を賜わば、即ち奸偽は自ら息(や)まん」と。詔して之に従う。太宗又た曰く、「古者、獄を断ずるに、必ず三槐・九棘の官に訊(と)う。今の三公・九卿は、即ち其の職なり。今より以後、大辟の罪は皆な中書・門下の四品以上及び尚書・九卿をして之を議せしめよ。此くの如くんば、庶(ちか)くは冤濫を免れん」と。是に由りて四年に至るまで、死刑を断ずること、天下に二十九人。幾(ほとん)ど刑措に致る。
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貞観政要・公平是の時、朝廷は大いに選挙を開く。或いは階資を詐偽する者有り。太宗其れをして自首せしむ。首せずんば、罪は死に至る。俄かに詐偽する者有り、事泄る。冑は法に拠りて流を断じて以て之を奏す。太宗曰く、「朕は初め敕を下し、首せざる者は死とす。今、断じて法に従う。是れ天下に示すに不信を以てするなり」と。冑曰く、「陛下、当に即ち之を殺すべくんば、臣の及ぶ所に非ず。既に所司に付す。臣は敢えて法を虧かず」と。太宗曰く、「卿は自ら法を守りて、朕をして信を失わしむるか」と。冑曰く、「法は国家の大信を天下に布く所以なり。言は当時の喜怒の発する所のみ。陛下は一朝の忿を発して、之を殺すを許す。既に不可なるを知りて、之を寘(お)くに法を以てす。此れ乃ち小忿を忍びて大信を存するなり。臣窃かに陛下の為に之を惜しむ」と。太宗曰く、「朕が法に失う所有らば、卿能く之を正す。朕復た何をか憂えんや」と。
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貞観政要・公平貞観の初め、志は公道に存す。人に犯す所有らば、一一法に於てす。縦(たと)い時に臨みて処断すること或いは軽重有るも、但だ臣下の執論を見れば、忻然として受納せざる無し。民は罪の私無きを知る。故に甘心して怨まず。臣下は言いて忤(さか)らわざるを見る。故に力を尽くして以て忠を効(いた)す。頃年より以来、意は漸く深刻なり。三面の網を開くと雖も、而して察して淵中の魚を見る。取捨は愛憎に在り、軽重は喜怒に由る。之を愛する者は、罪は重しと雖も強いて之が辞を為す。之を悪む者は、過ちは小なりと雖も深く其の意を探る。法に定科無く、情に任せて以て軽重す。人に執論有らば、之を疑うに阿偽を以てす。故に罰を受くる者は控告する所無く、官に当たる者は敢えて正言する莫し。其の心を服せずして、但だ其の口を窮む。之に罪を加えんと欲せば、其れ辞無からんや。又た五品已上に犯す有らば、悉く曹司をして聞奏せしむ。本と其の情状を察して、哀矜する所有らんと欲す。今は乃ち曲げて小節を求め、或いは其の罪を重くす。人をして攻撃せしめ、惟だ深からざるを恨む。事に重条無くんば、之を法外に求めて加うる所、十に六七有り。故に頃年、犯す者は上に聞こゆるを懼れ、法司に付するを得るを以て、多幸と為す。告訐已(や)まず、窮理息まず。君は上に私し、吏は下に奸なり。細過を求めて大体を忘れ、一罰を行いて衆奸を起こす。此れ乃ち公平の道に背き、泣辜(きゅうこ)の意に乖(そむ)く。其の人和し訟息(や)むを欲するも、得べからざるなり。
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