貞観政要 / 刑法
《詩》云:「不識不知。」《書》曰:「無偏無黨。」一彼此於胸臆,捐好惡於心想。眾棄而後加刑,眾悅而後命賞。弱其強而治其亂,伸其屈而直其枉。故曰:如衡如石,不定物以數,物之懸者,輕重自見;如水如鏡,不示物以形,物之鑒者,妍蚩自露。勿渾渾而濁,勿皎皎而清;勿汶汶而暗,勿察察而明。雖冕旒蔽目而視於未形,雖黈纊塞耳而聽於無聲。縱心乎湛然之域,遊神於至道之精。扣之者,應洪纖而效響;酌之者,隨淺深而皆盈。故曰:天之清,地之寧,王之貞。四時不言而代序,萬物無為而受成。豈知帝有其力,而天下和平。吾王撥亂,戡以智力;人懼其威,未懷其德。我皇撫運,扇以淳風;民懷其始,未保其終。爰術金鏡,窮神盡性。使人以心,應言以行。包括理體,抑揚辭令。天下為公,一人有慶。開羅起祝,援琴命詩。一日二日,念茲在茲。惟人所召,自天祐之。爭臣司直,敢告前疑。
新字:《詩》云:「不識不知。」《書》曰:「無偏無党。」一彼此於胸臆,捐好悪於心想。衆棄而後加刑,衆悦而後命賞。弱其強而治其乱,伸其屈而直其枉。故曰:如衡如石,不定物以数,物之懸者,軽重自見;如水如鏡,不示物以形,物之鑒者,妍蚩自露。勿渾渾而濁,勿皎皎而清;勿汶汶而暗,勿察察而明。雖冕旒蔽目而視於未形,雖黈纊塞耳而聴於無声。縦心乎湛然之域,遊神於至道之精。扣之者,応洪繊而効響;酌之者,随浅深而皆盈。故曰:天之清,地之寧,王之貞。四時不言而代序,万物無為而受成。豈知帝有其力,而天下和平。吾王撥乱,戡以智力;人懼其威,未懐其徳。我皇撫運,扇以淳風;民懐其始,未保其終。爰術金鏡,窮神尽性。使人以心,応言以行。包括理体,抑揚辞令。天下為公,一人有慶。開羅起祝,援琴命詩。一日二日,念茲在茲。惟人所召,自天祐之。争臣司直,敢告前疑。
書き下し
『詩』に云う、「識らず知らず」と。『書』に曰く、「偏無く党無し」と。彼此を胸臆に一にし、好悪を心想に捐(す)つ。衆棄てて而る後に刑を加え、衆悦びて而る後に賞を命ず。其の強きを弱くして其の乱るるを治め、其の屈を伸ばして其の枉れるを直くす。故に曰く、衡の如く石の如し。物を定むるに数を以てせず。物の懸かる者は、軽重自ら見(あら)わる。水の如く鏡の如し。物に示すに形を以てせず。物の鑒みる者は、妍蚩(けんし)自ら露わる。渾渾として濁る勿かれ、皎皎として清き勿かれ。汶汶として暗き勿かれ、察察として明らかなる勿かれ。冕旒(べんりゅう)は目を蔽うと雖も未だ形あらざるに視、黈纊(とうこう)は耳を塞ぐと雖も声無きに聴く。心を湛然の域に縦(ほしいまま)にし、神を至道の精に遊ばしむ。之を扣(たた)く者は、洪繊に応じて響きを効(いた)す。之を酌む者は、浅深に随いて皆な盈つ。故に曰く、天の清、地の寧、王の貞なり。四時は言わずして代序し、万物は無為にして成るを受く。豈に知らんや、帝は其の力有りて、天下は和平なるを。吾が王は乱を撥(おさ)め、戡(か)つに智力を以てす。人は其の威を懼れ、未だ其の徳に懐(なつ)かず。我が皇は運を撫し、扇ぐに淳風を以てす。民は其の始めに懐き、未だ其の終わりを保たず。爰に金鏡を術(の)べ、神を窮め性を尽くす。人をして心を以てし、言に応ずるに行を以てせしむ。理体を包括し、辞令を抑揚す。天下を公と為し、一人に慶有り。羅を開き祝を起こし、琴を援(と)り詩を命ず。一日二日、茲を念いて茲に在り。惟だ人の召く所、天より之を祐(たす)く。争臣・司直、敢えて前疑に告ぐ。
現代語訳
『詩経』に「識らず知らず」とあり、『書経』に「偏りなく党派なし」とある。彼と此を胸の内で一つにし、好き嫌いを心から捨てる。皆が捨ててから刑を加え、皆が喜んでから賞を命じる。強いものを弱くし乱れたものを治め、屈したものを伸ばし曲がったものを直す。だから言う。秤のように分銅のように。物を数で決めるのではない。物が懸かれば、軽重は自ずと現れる。水のように鏡のように。物に形を示すのではない。物が映れば、美醜は自ずと露わになる。濁って混沌とするな、白々しく清らかであるな。ぼんやりと暗いな、あまりに細かく明らかであるな。冠の玉すだれが目を覆っても、形になる前に見る。耳栓が耳を塞いでも、声のないうちに聴く。心を静かな境地に遊ばせ、精神を至高の道に遊ばせる。叩く者には、大小に応じて響きを返す。汲む者には、浅深に応じてみな満ちる。だから言う。天の清らかさ、地の安らかさ、王の正しさ。四季は語らずして順に移り、万物は何もせずして成る。誰が知ろうか、帝の力があって、天下が和平であることを。我が王は乱を治め、知略と武力で勝った。人はその威を恐れたが、まだその徳に懐いていない。我が皇は時運を治め、淳朴な風を送る。民はその始めに懐いたが、まだ終わりを保っていない。ここに鏡を述べ、神を窮め性を尽くす。人には心をもってさせ、言葉には行いをもって応じさせる。道理を包み込み、言葉を整える。天下を公とし、一人に慶びがある。網を開いて祝い、琴を執って詩を作る。一日、二日、これを思ってここにある。ただ人が招くところ、天がこれを助ける。諫める臣、正す官として、あえて先の疑いを申し上げる。
解説
この章句が説くこと
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