貞観政要 / 公平
凡聽訟理獄,必原父子之親,立君臣之義,權輕重之序,測淺深之量。悉其聰明,致其忠愛,疑則與眾共之。疑則從輕者,所以重之也,故舜命咎繇曰:「汝作士,惟刑之恤。」又復加之以三訊,眾所善,然後斷之。是以為法,參之人情。故《傳》曰:「小大之獄,雖不能察,必以情。」而世俗拘愚苛刻之吏,以為情也者取貨者也,立愛憎者也,右親戚者也,陷怨讎者也。何世俗小吏之情,與夫古人之懸遠乎?有司以此情疑之群吏,人主以此情疑之有司,是君臣上下通相疑也,欲其盡忠立節,難矣。
新字:凡聴訟理獄,必原父子之親,立君臣之義,権輕重之序,測浅深之量。悉其聰明,致其忠愛,疑則与眾共之。疑則従輕者,所以重之也,故舜命咎繇曰:「汝作士,惟刑之恤。」又復加之以三訊,眾所善,然後断之。是以為法,参之人情。故《伝》曰:「小大之獄,雖不能察,必以情。」而世俗拘愚苛刻之吏,以為情也者取貨者也,立愛憎者也,右親戚者也,陥怨讎者也。何世俗小吏之情,与夫古人之懸遠乎?有司以此情疑之群吏,人主以此情疑之有司,是君臣上下通相疑也,欲其尽忠立節,難矣。
書き下し
凡そ訟を聴き獄を理むるは、必ず父子の親に原(もと)づき、君臣の義を立て、軽重の序を権(はか)り、浅深の量を測る。其の聡明を悉くし、其の忠愛を致す。疑わば則ち衆と之を共にす。疑わば則ち軽きに従うは、之を重んずる所以なり。故に舜は咎繇に命じて曰く、「汝は士と作(な)れ。惟れ刑を之れ恤(あわ)れめ」と。又復た之に加うるに三訊を以てす。衆の善しとする所、然る後に之を断ず。是を以て法を為すに、之を人情に参ず。故に『伝』に曰く、「小大の獄、察する能わずと雖も、必ず情を以てす」と。而るに世俗の拘愚苛刻の吏は、以為えらく、情なる者は貨を取る者なり、愛憎を立つる者なり、親戚に右(くみ)する者なり、怨讎を陥るる者なりと。何ぞ世俗の小吏の情と、夫の古人と懸かに遠きや。有司は此の情を以て之を群吏に疑い、人主は此の情を以て之を有司に疑う。是れ君臣上下、通じて相い疑うなり。其の忠を尽くし節を立てんことを欲するも、難きかな。
現代語訳
そもそも訴訟を聞き裁判を治めるには、必ず父子の情に基づき、君臣の義を立て、軽重の序を量り、浅深の程度を測ります。聡明さを尽くし、忠と愛を致す。疑わしければ、皆と共に議論する。疑わしければ軽きに従うのは、命を重んじるからです。だから舜は咎繇に命じて「お前は司法官となれ。ただ刑を憐れめ」と言いました。さらに三度の尋問を加える。皆がよしとして、その後に断じる。だから法を行うのに、人情を参照するのです。だから『春秋伝』に「大小の裁判は、すべてを察せなくとも、必ず情をもってせよ」とあります。ところが世俗の頑迷で苛酷な役人は、情とは賄賂を取ることであり、好き嫌いを立てることであり、親戚に味方することであり、仇を陥れることだと思っている。世俗の小役人の言う情と、古人の言う情と、なんと隔たっていることか。役所はこの情によって役人を疑い、君主はこの情によって役所を疑う。これでは君臣上下が、通じて互いに疑い合うことになる。忠を尽くし節を立てようと望んでも、難しいことです。