貞観政要 / 公平
刑部尚書張亮坐謀反下獄,詔令百官議之,多言亮當誅,惟殿中少監李道裕奏亮反形未具,明其無罪。太宗既盛怒,竟殺之。俄而刑部侍郎有闕,令宰相妙擇其人,累奏不可。太宗曰:「吾已得其人矣,往者李道裕議張亮云『反形未具』,可謂公平矣。當時雖不用其言,至今追悔。」遂授道裕刑部侍郎。
新字:刑部尚書張亮坐謀反下獄,詔令百官議之,多言亮当誅,惟殿中少監李道裕奏亮反形未具,明其無罪。太宗既盛怒,竟殺之。俄而刑部侍郎有闕,令宰相妙択其人,累奏不可。太宗曰:「吾已得其人矣,往者李道裕議張亮云『反形未具』,可謂公平矣。当時雖不用其言,至今追悔。」遂授道裕刑部侍郎。
書き下し
刑部尚書張亮、謀反に坐して獄に下る。詔して百官をして之を議せしむ。多く亮は誅に当たると言う。惟だ殿中少監李道裕のみ、亮の反形未だ具わらずと奏し、其の罪無きを明らかにす。太宗既に盛怒し、竟に之を殺す。俄かにして刑部侍郎に闕(けつ)有り。宰相をして妙に其の人を択ばしむ。累(しばしば)奏するも不可とす。太宗曰く、「吾は已に其の人を得たり。往者、李道裕は張亮を議して『反形未だ具わらず』と云う。公平と謂うべし。当時は其の言を用いずと雖も、今に至るまで追悔す」と。遂に道裕に刑部侍郎を授く。
現代語訳
刑部尚書の張亮が謀反に連座して投獄された。詔して百官に議論させた。多くが張亮は誅に当たると言った。ただ殿中少監の李道裕だけが、謀反の形跡はまだ揃っていないと奏し、無罪であることを主張した。太宗はすでに激怒しており、ついに殺した。まもなく刑部侍郎の席が空いた。宰相に慎重に人選させたが、たびたび奏上しても許可しなかった。太宗は言った。「私はもうその人を得ている。かつて李道裕が張亮について『謀反の形跡はまだ揃っていない』と言った。公平というべきだ。当時はその言葉を用いなかったが、今に至るまで悔いている」。そして李道裕に刑部侍郎を授けた。
解説
謀反の疑いで捕らえられた張亮について、百官のほとんどが「死罪にすべきだ」と述べる中、李道裕という一人だけが「謀反の証拠はまだ揃っていない」と無罪を主張しました。太宗はそれを聞き入れず、怒りのまま張亮を殺してしまいます。しかし後になって、刑部の重要な役職が空いたとき、太宗は「あのとき道裕は公平なことを言っていた。当時は用いなかったが、今も悔いている」と言い、その李道裕をその役職に取り立てました。大勢に流されず、証拠に基づいて一人だけ違う意見を述べた人を、時が経ってからでも正しく評価し直す。自分の判断が誤っていたと認めた上でのこの人事は、誠実な態度として心に残ります。集まりの場で一人だけ異なる意見を言う勇気を、後からでも汲み取ってあげたいものです。
この章句が説くこと
反形未具可謂公平矣至今追悔多数に流されない人