貞観政要 / 仁義
貞觀二年,太宗謂侍臣曰:「朕謂亂離之後,風俗難移,比觀百姓漸知廉恥,官民奉法,盜賊日稀,故知人無常俗,但政有治亂耳。是以為國之道,必須撫之以仁義,示之以威信,因人之心,去其苛刻,不作異端,自然安靜。公等宜共行斯事也!」
新字:貞観二年,太宗謂侍臣曰:「朕謂乱離之後,風俗難移,比観百姓漸知廉恥,官民奉法,盗賊日稀,故知人無常俗,但政有治乱耳。是以為国之道,必須撫之以仁義,示之以威信,因人之心,去其苛刻,不作異端,自然安静。公等宜共行斯事也!」
書き下し
貞観二年、太宗侍臣に謂いて曰く、「朕は謂えらく、乱離の後、風俗は移り難し、と。比(このごろ)観るに、百姓は漸く廉恥を知り、官民は法を奉じ、盗賊は日に稀なり。故に知る、人に常俗無く、但だ政に治乱有るのみなるを。是を以て国を為むるの道は、必ず須らく之を撫するに仁義を以てし、之に示すに威信を以てすべし。人の心に因り、其の苛刻を去り、異端を作さずんば、自然に安静ならん。公等宜しく共に斯の事を行うべし」と。
現代語訳
貞観二年、太宗が側近の臣に言った。「私は、戦乱の後は風俗を変えがたいと思っていた。ところが近頃見ると、民は次第に恥を知り、役人も民も法を守り、盗賊は日に日に減っている。だから分かる。人に決まった風俗はなく、ただ政治に治乱があるだけだ、と。だから国を治める道は、必ず仁義をもって撫で、威と信をもって示すことにある。人の心に沿い、過酷さを取り除き、奇をてらわなければ、自然に安らかになる。諸君はともにこれを行ってくれ」。
解説
「人には決まった風俗などなく、ただ政治に治まりと乱れがあるだけだ」――太宗のこの一言が、この段の核心です。戦乱が続いた後は世の中の風潮を変えるのは難しいと思っていたのに、実際に見てみると、民は次第に恥を知るようになり、役人も庶民も決まりを守り、盗みも日ごとに減っていった。人が悪いのではなく、置かれた場が悪かっただけなのです。乱れた世に置かれれば人は乱れ、整った場に置かれれば人は恥を知るようになる。同じ人間なのに、周りの整え方ひとつでふるまいがまるで変わってしまう。だとすれば、家庭でも職場でも、誰かの態度が荒れていると感じたとき、その人自身を責める前に、その人を取り巻く場や関わり方を見直してみる価値があります。
この章句が説くこと
人無常俗但政有治乱耳人ではなく環境去其苛刻賞罰
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