貞観政要 / 規諫太子
臣自驅馳宮闕,已積歲時,犬馬尚解識恩,木石猶能知感,臣所有管見,敢不盡言。如鑒以丹誠,則臣有生路;若責其忤旨,則臣是罪人。但悦意取容,臧孫方以疾疢;犯顏逆耳,《春秋》比之藥石。伏願停工巧之作,罷久役之人,絕鄭、衛之音,斥群小之輩。則三善允備,萬國作貞矣。
新字:臣自駆馳宮闕,已積歳時,犬馬尚解識恩,木石猶能知感,臣所有管見,敢不尽言。如鑒以丹誠,則臣有生路;若責其忤旨,則臣是罪人。但悦意取容,臧孫方以疾疢;犯顏逆耳,《春秋》比之薬石。伏願停工巧之作,罷久役之人,絶鄭、衛之音,斥群小之輩。則三善允備,万国作貞矣。
書き下し
臣は宮闕に駆馳してより、已に歳時を積む。犬馬すら尚お恩を識るを解す。木石すら猶お能く感を知る。臣が有らゆる管見、敢えて言を尽くさざらんや。如し鑑(かんが)みるに丹誠を以てせば、則ち臣に生路有り。若し其の旨に忤(さか)らうを責めば、則ち臣は是れ罪人なり。但だ意を悦ばせ容を取るは、臧孫は方(まさ)に以て疾疢(しつちん)と為す。顔を犯し耳に逆らうは、『春秋』之を薬石に比す。伏して願わくは工巧の作を停め、久役の人を罷め、鄭・衛の音を絶ち、群小の輩を斥けよ。則ち三善は允(まこと)に備わり、万国は貞と作らん。
現代語訳
臣が宮中に仕えてから、すでに年月を重ねました。犬や馬でさえ恩を知り、木や石でさえ感じることができます。臣の乏しい見識を、どうして言い尽くさずにいられましょう。もし丹誠を汲んでくださるなら、臣に生きる道があります。もしご意向に逆らったと責められるなら、臣は罪人です。しかし意を喜ばせ、気に入られようとすることを、臧孫はまさに病だとしました。逆鱗を冒し耳に逆らうことを、『春秋』は薬石に喩えました。伏して願わくは、精巧な工事を止め、長く使役された人を解き、みだらな音楽を絶ち、小人の輩を退けてください。そうすれば三つの善は備わり、万国は正しくなりましょう。
解説
「気に入られようとして機嫌をとることを、臧孫は病だとした」――于志寧はここで、心地よい言葉と耳に痛い言葉の違いを説きます。耳に逆らう言葉は薬や石針のように痛いが、体を治す。そして「私の真心を汲んでくださるなら生きる道があり、逆らったと責められるなら私は罪人です」と続けます。同じひとつの忠告が、受け取る側の心構えひとつで、忠実な進言にもなれば、ただの罪にもなる。諫める者は、その分かれ道に自分の身を差し出しているのです。親が子に、友人が友人に、本当に大事な忠告をするときも同じです。相手が素直に聞いてくれるとは限りません。それでも黙っていられないのは、相手を大切に思う気持ちが、叱られる恐さより勝っているからです。
この章句が説くこと
悦意取容臧孫方以疾疢犯顔逆耳比之薬石忠と罪の分かれ目