貞観政要 / 規諫太子
承乾覽書愈怒,謂玄素曰:「庶子患風狂耶?」
新字:承乾覧書愈怒,謂玄素曰:「庶子患風狂耶?」
書き下し
承乾は書を覧て愈々怒り、玄素に謂いて曰く、「庶子は風狂を患うるか」と。
現代語訳
承乾は書を読んでますます怒り、張玄素に言った。「庶子は気が狂ったのか」。
解説
諫言を受けた承乾の返答です。「庶子は気が狂ったのか」。張玄素の上書に対して、その内容にはひと言も答えず、いきなり相手の人格そのものを否定しています。反論の言葉が見つからない時、人はしばしばこういう態度に出ます。話の中身について答えるのではなく、「そんなことを言うお前がおかしい」と、相手そのものを攻撃する方向にすり替えるのです。この一言が出た瞬間、まともな話し合いは終わってしまいます。これは今の家庭でも近所付き合いでも、よく見かける光景です。指摘された内容が痛いところを突いていればいるほど、人は「そんな言い方はおかしい」「あなたの方こそどうなんだ」と、話をすり替えたくなるものです。もしそういう言葉が口をついて出そうになったら、それは自分が図星を突かれている合図かもしれません。承乾からこれほど激しく拒まれても、張玄素はそれでも諫め続けました。相手の反発の強さは、必ずしも自分が間違っている証拠にはならないのです。
この章句が説くこと
庶子患風狂耶人格攻撃へのすり替え対話の終わり