貞観政要 / 規諫太子
貞觀中,太子承乾數虧禮度,侈縱日甚,太子左庶子於志寧撰《諫苑》二十卷諷之。是時太子右庶子孔穎達每犯顏進諫。承乾乳母遂安夫人謂穎達曰:「太子長成,何宜屢得面摺?」對曰:「蒙國厚恩,死無所恨。」諫諍愈切。承乾令撰《孝經義疏》,穎達又因文見意,愈廣規諫之道。太宗並嘉納之,二人各賜帛五百疋,黄金一斤,以勵承乾之意。
新字:貞観中,太子承乾数虧礼度,侈縦日甚,太子左庶子於志寧撰《諫苑》二十巻諷之。是時太子右庶子孔穎達毎犯顏進諫。承乾乳母遂安夫人謂穎達曰:「太子長成,何宜屢得面摺?」対曰:「蒙国厚恩,死無所恨。」諫諍愈切。承乾令撰《孝経義疏》,穎達又因文見意,愈広規諫之道。太宗並嘉納之,二人各賜帛五百疋,黄金一斤,以勵承乾之意。
書き下し
貞観中、太子承乾は数(しばしば)礼度を虧(か)き、侈縦は日々に甚だし。太子左庶子于志寧、『諫苑』二十巻を撰して之を諷す。是の時、太子右庶子孔穎達は顔を犯して諫を進むる毎に、承乾の乳母遂安夫人、穎達に謂いて曰く、「太子は長成せり。何ぞ宜しく屢々面摺(めんせつ)を得べけんや」と。対えて曰く、「国の厚恩を蒙る。死すとも恨む所無し」と。諫諍愈々切なり。承乾は『孝経義疏』を撰せしむ。穎達は又た文に因りて意を見(あら)わし、愈々規諫の道を広む。太宗並びに之を嘉納し、二人に各々帛五百疋、黄金一斤を賜い、以て承乾の意を励ます。
現代語訳
貞観年間、太子の承乾はしばしば礼を欠き、驕りと放縦が日々ひどくなった。太子左庶子の于志寧は『諫苑』二十巻を著して、それとなく諫めた。この時、太子右庶子の孔穎達は、逆鱗を冒して諫めるたびに、承乾の乳母である遂安夫人が孔穎達に言った。「太子はもう成人されました。どうして何度も面と向かって責めてよいのですか」。答えて言った。「国の厚い恩を受けている。死んでも悔いはない」。諫めはますます切実になった。承乾が『孝経義疏』を編ませると、孔穎達はまた文章にことよせて意を示し、ますます諫めの道を広げた。太宗はともによしとして受け入れ、二人にそれぞれ絹五百疋、黄金一斤を賜って、承乾の心を励まそうとした。