貞観政要 / 尊敬師傅
太宗乃令洎與岑文本、馬周遞日往東宮,與皇太子談論。
新字:太宗乃令洎与岑文本、馬周逓日往東宮,与皇太子談論。
書き下し
太宗乃ち洎と岑文本・馬周とをして日を逓(かわ)るがわる東宮に往かしめ、皇太子と談論せしむ。
現代語訳
太宗はそこで、劉洎と岑文本・馬周に、日を交代で東宮に行かせ、皇太子と語り合わせた。
解説
尊敬師傅篇を締めくくる一行です。劉洎の上奏を受けて、太宗は劉洎・岑文本・馬周という三人の重臣を、日を交代しながら東宮に通わせ、皇太子と語り合わせました。息子をそばに置いておきたいという自分の気持ちを抑え、外に出て学べる環境を整えたのです。ここで見落とせないのは、師を一人に決めず、三人が入れ替わりで通ったという点です。一人の師だけに任せれば、太子はその人の考え方や癖にそのまま染まってしまいます。三人であれば、それぞれの物の見方や語り口に触れることができ、偏りが小さくなります。子どもの教育でも、一人の先生や一つの塾だけに頼るのではなく、いろいろな大人や年上の人と話す機会を持たせることが、考え方の幅を広げることにつながります。太宗の采配には、そうした細やかな配慮が表れています。
この章句が説くこと
逓日往東宮三人の重臣を交代で多様な視点
関連する章句
-
貞観政要・尊敬師傅貞観十八年、高宗初めて立ちて皇太子と為る。尚お未だ賢を尊び道を重んぜず。太宗又た嘗て太子をして寝殿の側に居らしめ、絶えて東宮に往かしめず。散騎常侍劉洎、書を上りて曰く、
-
貞観政要・尊敬師傅貞観十七年、太宗司徒長孫無忌・司空房玄齢に謂いて曰く、「三師は徳を以て人を道(みちび)く者なり。若し師の体卑しくんば、太子は則(のっと)る所無し」と。是に於て詔して太子の三師に接する儀註を撰せしむ。太子は殿門を出でて迎え、先ず三師を拝す。三師答拝す。門毎に三師に譲る。三師坐して、太子乃ち坐す。三師に書を与うるに、前は名して惶恐、後は名して惶恐再拝とす。
-
貞観政要・尊敬師傅窃かに以えらく、良娣の選は、中国に遍し。仰ぎ惟うに聖旨は、本と内を典(つかさど)るを求む。微を防ぎ、遠慮を慎まんことを冀う。臣下の知る所なり。人物を徴簡するに暨(およ)びては、則ち聘納と相い違う。監撫二周なるも、未だ一士に近づかず。愚謂えらく、内は既に彼くの如し。外も亦た宜しく然るべし、と。恐らくは物議を招き、陛下は内を重んじて外を軽んずと謂わん。古の太子は、安を問いて退く。敬を君父に広むる所以なり。宮を異にして処る。嫌疑を分別する所以なり。今、太子は一たび天闈に侍すれば、動もすれば旬朔を移す。師傅已下、接見する由無し。仮令(たと)い供奉に隟有り、暫く東朝に還るも、拝謁既に疏に、且つ事は俯仰す。規諫の道、固より未だ暇あらざる所なり。陛下は以て親しく教うべからず。宮寀は因りて以て進言する無し。具寮有りと雖も、竟に将た何をか補わん。
-
貞観政要・尊敬師傅伏して願わくは俯して前躅に循い、稍(やや)下流を抑え、遠大の規を弘め、師友の義を展(の)べよ。則ち離徽克く茂り、帝図斯に広し。凡そ黎元に在る者、孰か慶賴せざらん。太子は温良恭倹、聡明睿哲なり。含霊の悉く知る所、臣豈に知らざらんや。而れども浅識にして勤勤、愚忠を効(いた)さんことを思う者は、滄溟の益ます潤い、日月の華を増さんことを願えばなり。
-
貞観政要・尊敬師傅貞観十一年、礼部尚書王珪を以て兼ねて魏王の師と為す。太宗尚書左僕射房玄齢に謂いて曰く、「古来、帝子は深宮に生まる。其の成人するに及び、驕逸ならざる無し。是を以て傾覆相い踵ぎ、能く自ら済(すく)う者少なし。我は今、厳しく子弟を教え、皆な安全を得しめんと欲す。王珪は我が久しく駆使し、甚だ剛直なるを知る。志は忠孝に存す。選びて子の師と為す。卿宜しく泰に語れ、王珪に対する毎に、我が面を見るが如くせよ。宜しく尊敬を加うべし。懈怠するを得ざれ、と」と。珪も亦た師道を以て自ら処る。時議も之を善しとす。
-
貞観政要・尊敬師傅貞観六年、詔して曰く、「朕は比(このごろ)経史を尋討す。明王聖帝、曷(なん)ぞ嘗て師傅無からんや。前に進むる所の令には遂に三師の位を睹(み)ず。意は将に未だ可ならざらんとす。何を以て然るか。黄帝は大顛に学び、顓頊は録図に学び、堯は尹寿に学び、舜は務成昭に学び、禹は西王国に学び、湯は威子伯に学び、文王は子期に学び、武王は虢叔に学ぶ。前代の聖王、未だ此の師に遭わずんば、則ち功業は天下に著れず、名誉は載籍に伝わらず。況んや朕は百王の末に接し、智は聖人に同じからず。其れ師傅無くんば、安くんぞ以て兆民に臨むべき者ならんや。『詩』に云わずや、『愆(あやま)らず忘れず、率(つね)に旧章に由る』と。夫れ学ばずんば、則ち古の道に明らかならず。而して能く政もて太平を致す者は、未だ之れ有らざるなり。即ち令に著し、三師の位を置くべし」と。
人生の答えは、ぜんぶ古典に書いてあった。
古典の入門書『人生の教科書』(PDF)と、師導の全機能1か月がセットで700円。二十四の悩みに、論語・老子・孫子から徒然草・五輪書までが答えます。
本の中身を見る