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貞観政要 / 封建

自陛下仰順聖慈,嗣膺寶歷,情深致治,綜覈前王。雖至道無名,言象所紀,略陳梗概,實所庶幾。愛敬烝烝,勞而不倦,大舜之孝也。訪安內豎,親嘗御膳,文王之德也。每憲司讞罪,尚書奏獄,大小必察,枉直咸舉,以斷趾之法,易大辟之刑,仁心隱惻,貫徹幽顯,大禹之泣辜也。正色直言,虛心受納,不簡鄙訥,無棄芻蕘,帝堯之求諫也。弘獎名教,勸勵學徒,既擢明經於青紫,將升碩儒於卿相,聖人之善誘也。群臣以宮中暑濕,寢饍或乖,請移御高明,營一小閣。遂惜十家之產,竟抑子來之願,不吝陰陽之感,以安卑陋之居。頃歲霜儉,普天饑饉。喪亂甫爾,倉廩空虛。聖情矜湣,勤加賑恤,竟無一人流離道路,猶且食惟藜藿,樂徹簨虡。言必淒動,貌成臒瘦.公旦喜於重譯。文命矜其即敘.陛下每見四夷款附,萬里歸仁,必退思進省,凝神動慮,恐妄勞中國,以求遠方,不藉萬古之英聲,以存一時之茂實。心切憂勞,志絕遊幸,每旦視朝,聽受無倦,智周於萬物,道濟於天下。罷朝之後,引進名臣,討論是非,備盡肝膈,惟及政事,更無異辭。才日昃,必命才學之士,賜以清閑,高談典籍,雜以文詠,間以玄言,乙夜忘疲,中宵不寐。此之四道,獨邁往初,斯實生民以來,一人而已。弘茲風化,昭示四方,信可以期月之間,彌綸天壤。而淳粹尚阻,浮詭未移,此由習之久,難以卒變。請待斫雕成器,以質代文,刑措之教一行,登封之禮云畢,然後定疆理之制,議山河之賞,未為晚焉。《易》稱:「天地盈虛,與時消息,況於人乎?」美哉斯言也。

新字:自陛下仰順聖慈,嗣膺宝歴,情深致治,綜覈前王。雖至道無名,言象所紀,略陳梗概,実所庶幾。愛敬烝烝,労而不倦,大舜之孝也。訪安內豎,親嘗御膳,文王之徳也。毎憲司讞罪,尚書奏獄,大小必察,枉直咸舉,以断趾之法,易大辟之刑,仁心隠惻,貫徹幽顕,大禹之泣辜也。正色直言,虚心受納,不簡鄙訥,無棄芻蕘,帝堯之求諫也。弘獎名教,勧勵學徒,既擢明経於青紫,将升碩儒於卿相,聖人之善誘也。群臣以宮中暑湿,寝饍或乖,請移御高明,営一小閣。遂惜十家之産,竟抑子来之願,不吝陰陽之感,以安卑陋之居。頃歲霜倹,普天饑饉。喪乱甫爾,倉廩空虚。聖情矜湣,勤加賑恤,竟無一人流離道路,猶且食惟藜藿,楽徹簨虡。言必淒動,貌成臒瘦.公旦喜於重訳。文命矜其即敘.陛下毎見四夷款附,万里歸仁,必退思進省,凝神動慮,恐妄労中国,以求遠方,不藉万古之英声,以存一時之茂実。心切憂労,志絶遊幸,毎旦視朝,聴受無倦,智周於万物,道済於天下。罷朝之後,引進名臣,討論是非,備尽肝膈,惟及政事,更無異辞。才日昃,必命才學之士,賜以清閑,高談典籍,雑以文詠,間以玄言,乙夜忘疲,中宵不寐。此之四道,独邁往初,斯実生民以来,一人而已。弘茲風化,昭示四方,信可以期月之間,弥綸天壤。而淳粋尚阻,浮詭未移,此由習之久,難以卒変。請待斫雕成器,以質代文,刑措之教一行,登封之礼云畢,然後定疆理之制,議山河之賞,未為晩焉。《易》稱:「天地盈虚,与時消息,況於人乎?」美哉斯言也。

書き下し

陛下、聖慈に仰ぎ順い、宝暦を嗣膺(しよう)せしより、情は治を致すに深く、前王を綜覈(そうかく)す。至道は名無く、言象の紀す所と雖も、略ぼ梗概を陳ぶるに、実に庶幾(ちか)き所なり。愛敬烝烝として、労して倦まざるは、大舜の孝なり。安を内豎に訪い、親しく御膳を嘗むるは、文王の徳なり。憲司の罪を讞(さだ)め、尚書の獄を奏する毎に、大小必ず察し、枉直咸な挙ぐ。趾を断つの法を以て、大辟の刑に易(か)う。仁心隠惻、幽顕に貫徹するは、大禹の辜(つみ)に泣くなり。色を正し直言し、心を虚しくして受納し、鄙訥を簡(えら)ばず、芻蕘を棄つる無きは、帝堯の諫を求むるなり。名教を弘奨し、学徒を勧励す。既に明経を青紫に擢(ぬきん)で、将に碩儒を卿相に升(のぼ)せんとするは、聖人の善誘なり。群臣は宮中の暑湿にして、寝饍或いは乖(そむ)くを以て、御を高明に移し、一小閣を営まんことを請う。遂に十家の産を惜しみ、竟に子来の願いを抑う。陰陽の感を吝(お)しまず、以て卑陋の居に安んず。頃歳、霜倹にして、普天饑饉なり。喪乱甫(はじ)めて爾(しか)り、倉廩は空虚なり。聖情矜湣(きょうびん)し、勤めて賑恤を加う。竟に一人の道路に流離する無し。猶お且つ食は惟だ藜藿(れいかく)、楽は簨虡(しんきょ)を徹す。言えば必ず淒動し、貌は臒痩(かくそう)を成す。公旦は重訳を喜び、文命は其の即叙を矜(ほこ)る。陛下は四夷の款附し、万里の仁に帰するを見る毎に、必ず退きて思い進みて省み、神を凝らし慮を動かす。妄りに中国を労して、以て遠方を求め、万古の英声を藉らずして、以て一時の茂実を存せんことを恐る。心は憂労に切に、志は遊幸を絶つ。旦毎に朝を視、聴受して倦むこと無し。智は万物に周く、道は天下に済(な)る。朝を罷むるの後、名臣を引進し、是非を討論し、備さに肝膈を尽くす。惟だ政事に及び、更に異辞無し。才(わず)かに日昃(かたむ)けば、必ず才学の士に命じ、賜うに清閑を以てす。高く典籍を談じ、雑うるに文詠を以てし、間(まじ)うるに玄言を以てす。乙夜に疲れを忘れ、中宵に寐ねず。此の四道は、独り往初に邁(こ)ゆ。斯れ実に生民より以来、一人のみ。茲の風化を弘め、四方に昭示せば、信に期月の間を以て、天壌に弥綸すべし。而れども淳粋尚お阻まれ、浮詭未だ移らざるは、此れ習うこと久しきに由る。卒(にわか)に変じ難し。請う、雕を斫(き)りて器と成し、質を以て文に代え、刑措の教一たび行われ、登封の礼云に畢(お)わるを待ちて、然る後に疆理の制を定め、山河の賞を議せば、未だ晩しと為さざるなり。『易』に称す、「天地は盈虚し、時と消息す。況んや人に於てをや」と。美なるかな、斯の言や。

現代語訳

陛下が聖なる慈しみに従い、大位を継がれてから、治を実現しようとする心は深く、前代の王を調べ究めておられます。至高の道は名づけようがなく、言葉や形で記せるものではありませんが、あらましを述べれば、まことに理想に近い。愛敬が篤く、労して倦まないのは、大舜の孝です。侍従に安否を尋ね、自ら御膳を味見されるのは、文王の徳です。裁判所が罪を定め、尚書が獄を奏上するたびに、大小を必ず調べ、曲直をすべて明らかにする。足を断つ刑をもって死刑に代える。仁の心が幽明に貫くのは、大禹が罪人に涙したのと同じです。姿勢を正して直言し、心を虚しくして受け入れ、拙い言葉も選ばず、草刈りの言葉も捨てないのは、帝堯が諫めを求めたのと同じです。教えを広め奨励し、学ぶ者を励ます。経学に通じた者を高位に抜擢し、大儒を大臣に昇らせようとされるのは、聖人の善き導きです。群臣が、宮中は暑く湿って、寝食に差し障ると考え、高く明るい所へ移り、小さな楼閣を造ることを願いました。ところが陛下は十家分の財を惜しみ、進んで造ろうとする願いを抑えられた。暑さ寒さの苦しみを厭わず、粗末な住まいに安んじられた。近年、霜害で凶作となり、天下に飢饉がありました。戦乱が終わったばかりで、倉は空でした。陛下は憐れみ、勤めて救済を加えられた。ついに一人も路頭に迷う者はなかった。それでも食事は粗末な菜だけで、音楽の楽器を取り払われた。話すたびに悲しみに動かされ、顔は痩せ細られた。周公は遠方の朝貢を喜び、禹はその服属を誇りました。陛下は四方の異民族が慕い、万里から仁に帰するのを見るたび、必ず退いて思い、進んで省み、心を凝らして考えられる。みだりに中国を苦しめて遠方を求め、万古の名声によらずに一時の実績を得ることを恐れられる。心は憂労に切実で、遊興を断たれた。毎朝、朝廷に出て、聞き入れて倦むことがない。知は万物に及び、道は天下に成る。朝廷が終わった後、名臣を招き、是非を論じ、心の底を尽くされる。ただ政事に及ぶだけで、他の話はない。日が傾けば、必ず学才ある士を召し、静かな時を賜る。高く典籍を語り、詩文を交え、玄妙な言葉を混じえる。夜更けまで疲れを忘れ、真夜中まで眠られない。この四つの道は、ひとり往古を超えています。まことに人が生まれて以来、ただ一人だけです。この教化を広め、四方に示せば、まことに一ヶ月の間に、天地に行き渡るでしょう。しかし淳朴さはなお阻まれ、軽薄さはまだ改まらない。これは長年の習慣によるもので、急には変えられません。願わくは、飾りを削って器とし、質朴をもって飾りに代え、刑罰を用いずにすむ教化が行われ、封禅の礼が終わるのを待って、その後に領地の制度を定め、山河の賞を議されても、遅くはありません。『易経』に「天地は満ち欠けし、時とともに消長する。まして人においては」とあります。美しい言葉です。

解説

太宗を長く讃えた後、最後に「その後に議されても、遅くはありません」と結ぶ一段です。反対を、否定ではなく先送りとして提示する。今はまだ時期でない、と。全否定より、時期尚早のほうが受け入れやすい。相手の面目を保ちながら、実質的に止める。反論の技術として、学ぶところがあります。

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