貞観政要 / 択官
貞觀三年,太宗謂吏部尚書杜如晦曰:「比見吏部擇人,惟取其言詞刀筆,不悉其景行。數年之後,惡跡始彰,雖加刑戮,而百姓已受其弊。如何可獲善人?」如晦對曰:「兩漢取人,皆行著鄉閭,州郡貢之,然後入用,故當時號為多士。今每年選集,向數千人,厚貌飾詞,不可知悉,選司但配其階品而已。銓簡之理,實所未精,所以不能得才。」太宗乃將依漢時法令,本州辟召,會功臣等將行世封事,遂止。
新字:貞観三年,太宗謂吏部尚書杜如晦曰:「比見吏部択人,惟取其言詞刀筆,不悉其景行。数年之後,悪跡始彰,雖加刑戮,而百姓已受其弊。如何可獲善人?」如晦対曰:「両漢取人,皆行著鄉閭,州郡貢之,然後入用,故当時号為多士。今毎年選集,向数千人,厚貌飾詞,不可知悉,選司但配其階品而已。銓簡之理,実所未精,所以不能得才。」太宗乃将依漢時法令,本州辟召,会功臣等将行世封事,遂止。
書き下し
貞観三年、太宗吏部尚書杜如晦に謂いて曰く、「比(このごろ)吏部の人を択ぶを見るに、惟だ其の言詞刀筆を取り、其の景行を悉(つく)さず。数年の後、悪跡始めて彰る。刑戮を加うと雖も、而れども百姓は已に其の弊を受く。如何せば善人を獲べき」と。如晦対えて曰く、「両漢の人を取るは、皆な行いは郷閭に著る。州郡之を貢し、然る後に用に入る。故に当時号して多士と為す。今、毎年選集するに、数千人に向(なんな)んとす。貌を厚くし詞を飾る。知悉すべからず。選司は但だ其の階品を配するのみ。銓簡の理は、実に未だ精ならざる所なり。才を得る能わざる所以なり」と。太宗乃ち将に漢時の法令に依り、本州にて辟召せんとす。会(たまた)ま功臣等の将に世封の事を行わんとするに、遂に止む。
現代語訳
貞観三年、太宗が吏部尚書の杜如晦に言った。「近頃、吏部の人選を見ると、ただ言葉巧みさや文書の腕だけを取り、その日頃の行いを尽くして調べていない。数年の後、悪い行跡が明らかになる。刑罰を加えても、民はすでに害を受けている。どうすれば良い人を得られるか」。杜如晦は答えて言った。「漢の時代の人選は、みな日頃の行いが郷里に知れ渡っていました。州や郡が推挙し、その後に登用しました。だから当時は人材が多いと言われたのです。今は毎年の選考に、数千人が集まります。表情を取り繕い、言葉を飾る。すべてを知ることはできません。選考の役所は、ただ階級を割り当てるだけです。選抜の方法は、実にまだ精密でありません。だから人材を得られないのです」。太宗は漢の法にならい、地方で人を選ぼうとした。ちょうど功臣に世襲の領地を与える件があり、結局は取りやめとなった。