貞観政要 / 択官
貞觀元年,太宗謂房玄齡等曰:「致治之本,惟在於審。量才授職,務省官員。故《書》稱:『任官惟賢才。』又云:『官不必備,惟其人。』若得其善者,雖少亦足矣。其不善者,縱多亦奚為?古人亦以官不得其才,比於畫地作餅,不可食也。《詩》曰:『謀夫孔多,是用不就。』又孔子曰:『官事不攝,焉得儉?』且『千羊之皮,不如一狐之腋。』此皆載在經典,不能具道。當須更並省官員,使得各當所任,則無為而治矣。卿宜詳思此理,量定庶官員位。」玄齡等由是所置文武總六百四十員。太宗從之,因謂玄齡曰:「自此儻有樂工雜類,假使術逾儕輩者,只可特賜錢帛以賞其能,必不可超授官爵,與夫朝賢君子比肩而立,同坐而食,遺諸衣冠以為恥累。」
新字:貞観元年,太宗謂房玄齡等曰:「致治之本,惟在於審。量才授職,務省官員。故《書》稱:『任官惟賢才。』又云:『官不必備,惟其人。』若得其善者,雖少亦足矣。其不善者,縦多亦奚為?古人亦以官不得其才,比於画地作餅,不可食也。《詩》曰:『謀夫孔多,是用不就。』又孔子曰:『官事不摂,焉得倹?』且『千羊之皮,不如一狐之腋。』此皆載在経典,不能具道。当須更並省官員,使得各当所任,則無為而治矣。卿宜詳思此理,量定庶官員位。」玄齡等由是所置文武総六百四十員。太宗従之,因謂玄齡曰:「自此儻有楽工雑類,仮使術逾儕輩者,只可特賜銭帛以賞其能,必不可超授官爵,与夫朝賢君子比肩而立,同坐而食,遺諸衣冠以為恥累。」
書き下し
貞観元年、太宗房玄齢等に謂いて曰く、「治を致すの本は、惟だ審らかにするに在り。才を量りて職を授け、務めて官員を省く。故に『書』に称す、『官に任ずるは惟れ賢才』と。又た云う、『官は必ずしも備えず、惟だ其の人あれ』と。若し其の善き者を得ば、少なしと雖も亦た足れり。其の善からざる者は、多しと縦(たと)うとも亦た奚(なん)ぞ為さん。古人も亦た官の其の才を得ざるを以て、地に画きて餅を作るに比す。食らうべからざるなり。『詩』に曰く、『謀夫は孔(はなは)だ多し。是を用て就らず』と。又た孔子曰く、『官事摂(か)ねずんば、焉くんぞ倹なるを得ん』と。且つ『千羊の皮は、一狐の腋に如かず』と。此れ皆な経典に載在す。具さには道う能わず。当に須らく更に官員を並省し、各々任ずる所に当たるを得しむべし。則ち無為にして治まらん。卿宜しく詳らかに此の理を思い、庶官の員位を量定すべし」と。玄齢等是に由りて置く所の文武は総べて六百四十員。太宗之に従う。因りて玄齢に謂いて曰く、「此より儻(も)し楽工雑類有りて、仮使(たと)い術は儕輩に逾(こ)ゆるとも、只だ特に銭帛を賜いて以て其の能を賞すべし。必ず超えて官爵を授け、夫の朝賢君子と肩を比べて立ち、坐を同じくして食らわしむべからず。諸々の衣冠に恥累と為すを遺(のこ)す」と。
現代語訳
貞観元年、太宗が房玄齢らに言った。「治を実現する根本は、ただ審らかに見極めることにある。才能を量って職を授け、努めて官の員数を減らす。だから『書経』に『官に任じるのは賢才のみ』とある。また『官は必ずしも数を揃えなくてよい。ただ適任者があればよい』とある。良い者を得られれば、少なくとも十分だ。良くない者は、多くても何になろう。古人も、官が適材を得ないことを、地面に絵を描いて餅を作るのに喩えた。食べられないのだ。『詩経』に『相談役は多すぎる。だから事が成らない』とある。また孔子は『役所の仕事を兼ねなければ、どうして倹約といえよう』と言った。さらに『千頭の羊の皮も、一頭の狐の脇の毛には及ばない』ともいう。これらはみな経典に載っている。すべては語り尽くせない。さらに官の員数を整理統合し、それぞれ任にふさわしくあらしめるべきだ。そうすれば、何もせずとも治まる。あなたはよくこの道理を考え、諸官の員数を定めよ」。房玄齢らはこれによって、文武あわせて六百四十人と定めた。太宗はこれに従った。そして房玄齢に言った。「今後もし楽師や雑技の者がいて、たとえその技が仲間より優れていても、ただ特別に金や絹を賜って、その技を賞するにとどめよ。決して飛び越えて官爵を授け、朝廷の賢者や君子と肩を並べて立ち、席を同じくして食べさせてはならない。官人たちにとって、恥となる負い目を残すことになる」。