貞観政要 / 納諫
貞觀三年,李大亮為涼州都督,嘗有臺使至州境,見有名鷹,諷大亮獻之。大亮密表曰:「陛下久絕畋獵,而使者求鷹。若是陛下之意,深乖昔旨;如其自擅,便是使非其人。」太宗下書曰:「以卿兼資文武,誌懷貞確,故委藩牧,當茲重寄。比在州鎮,聲績遠彰,念此忠勤,豈忘寤寐?使遣獻鷹,遂不曲順,論今引古,遠獻直言。披露腹心,非常懇到,覽用嘉嘆,不能已已。有臣若此,朕復何憂!宜守此誠,終始若一。《詩》云:『靖恭爾位,好是正直。神之聽之,介爾景福。』古人稱一言之重,侔於千金,卿之所言,深足貴矣。今賜卿金壺瓶、金碗各一枚,雖無千鎰之重,是朕自用之物,卿立誌方直,竭節至公,處職當官,每副所委,方大任使,以申重寄。公事之閒,宜觀典籍。兼賜卿荀悅《漢紀》一部,此書敘致簡要,論議深博,極為政之體,盡君臣之義,今以賜卿,宜加尋閱。」
新字:貞観三年,李大亮為涼州都督,嘗有台使至州境,見有名鷹,諷大亮献之。大亮密表曰:「陛下久絶畋猟,而使者求鷹。若是陛下之意,深乖昔旨;如其自擅,便是使非其人。」太宗下書曰:「以卿兼資文武,誌懐貞確,故委藩牧,当茲重寄。比在州鎮,声績遠彰,念此忠勤,豈忘寤寐?使遣献鷹,遂不曲順,論今引古,遠献直言。披露腹心,非常懇到,覧用嘉嘆,不能已已。有臣若此,朕復何憂!宜守此誠,終始若一。《詩》云:『靖恭爾位,好是正直。神之聴之,介爾景福。』古人稱一言之重,侔於千金,卿之所言,深足貴矣。今賜卿金壺瓶、金碗各一枚,雖無千鎰之重,是朕自用之物,卿立誌方直,竭節至公,処職当官,毎副所委,方大任使,以申重寄。公事之閒,宜観典籍。兼賜卿荀悅《漢紀》一部,此書敘致簡要,論議深博,極為政之体,尽君臣之義,今以賜卿,宜加尋閱。」
書き下し
貞観三年、李大亮は涼州都督と為る。嘗て臺使の州境に至る有り。名鷹有るを見て、大亮に諷して之を献ぜしむ。大亮密表して曰く、「陛下は久しく畋猟を絶つ。而るに使者は鷹を求む。若し是れ陛下の意ならば、深く昔の旨に乖(そむ)く。如し其れ自ら擅(ほしいまま)にせば、便ち是れ使は其の人に非ず」と。太宗書を下して曰く、「卿は文武を兼資し、志は貞確を懐く。故に藩牧を委ね、茲の重寄に当たらしむ。比(このごろ)州鎮に在り、声績遠く彰る。此の忠勤を念う。豈に寤寐(ごび)に忘れんや。使を遣わして鷹を献ぜしむるに、遂に曲順せず。今を論じ古を引き、遠く直言を献ず。腹心を披露すること、非常に懇到なり。覧て嘉嘆し、已(や)むこと能わず。臣の此くの若き有らば、朕復た何をか憂えん。宜しく此の誠を守り、終始一の若くすべし。『詩』に云う、『爾の位に靖恭(せいきょう)し、是の正直を好めば、神之を聴きて、爾に景福を介(たす)けん』と。古人は一言の重きは、千金に侔(ひと)しと称す。卿の言う所、深く貴ぶに足れり。今、卿に金の壺瓶、金の碗各々一枚を賜う。千鎰の重き無しと雖も、是れ朕の自ら用うるの物なり。卿は志を立つること方直、節を竭くすこと至公。職に処り官に当たり、毎に委ぬる所に副(そ)う。方に大いに任使し、以て重寄を申(の)べん。公事の閒、宜しく典籍を観るべし。兼ねて卿に荀悦『漢紀』一部を賜う。此の書は叙致簡要、論議深博、極めて政の体を為し、尽く君臣の義たり。今、以て卿に賜う。宜しく尋閲を加うべし」と。
現代語訳
貞観三年、李大亮が涼州都督となった。ある時、朝廷の使者が州の境に来て、良い鷹がいるのを見つけ、大亮にほのめかして献上させようとした。大亮は密かに上表して言った。「陛下は久しく狩猟をやめておられます。ところが使者は鷹を求めます。もしこれが陛下のご意向なら、以前のお言葉に大きく背きます。もし使者が勝手にしているなら、人選を誤っておられます」。太宗は書を下して言った。「あなたは文武を兼ね備え、志は堅く確かだ。だから地方の統治を委ね、この重い任に当たらせた。近頃、任地にあって、名声と実績が遠くまで届いている。この忠実な勤めを思うと、寝ても覚めても忘れられない。使者が鷹を献上させようとしたのに、あなたは曲げて従わなかった。今を論じ古を引き、遠方から直言を献じた。心の内を明かすこと、まことに懇切だった。読んで感嘆し、やむことができない。こういう臣がいるなら、私は何を憂えようか。この誠を守り、始めから終わりまで変わらずにいてほしい。『詩経』に『自分の職位を慎み敬い、正直を好めば、神はそれを聴いて、大きな幸いを授ける』とある。古人は、一言の重さは千金に等しいと言った。あなたの言葉は、深く貴ぶに足りる。今、金の壺瓶と金の碗を一つずつ賜る。千鎰の重さはないが、私が自ら使っていた物だ。あなたは志が方正で、節義を尽くし、公を極めている。職にあり官に当たって、いつも委ねた期待に応えてくれる。今後さらに大きく任用し、重い信頼を示そう。公務の合間には、書物を読むがよい。あわせて荀悦の『漢紀』一部を賜る。この書は叙述が簡潔で要を得ており、議論は深く広く、政治の本質を極め、君臣の義を尽くしている。今これをあなたに賜る。よく読み込んでほしい」。