貞観政要 / 納諫
臣嘗見隋室初造此殿,楹棟宏壯,大木非近道所有,多自豫章采來,二千人拽一柱,其下施轂,皆以生鐵為之,中間若用木輪,動即火出。略計一柱,已用數十萬,則餘費又過倍於此。臣聞阿房成,秦人散;章華就,楚眾離;乾元畢工,隋人解體。且以陛下今時功力,何如隋日?承雕殘之後,役瘡痍之人,費億萬之功,襲百王之弊,以此言之,恐甚於煬帝遠矣。深願陛下思之,無為由余所笑,則天下幸甚矣。
新字:臣嘗見隋室初造此殿,楹棟宏壮,大木非近道所有,多自予章采来,二千人拽一柱,其下施轂,皆以生鉄為之,中間若用木輪,動即火出。略計一柱,已用数十万,則余費又過倍於此。臣聞阿房成,秦人散;章華就,楚眾離;乾元畢工,隋人解体。且以陛下今時功力,何如隋日?承雕残之後,役瘡痍之人,費億万之功,襲百王之弊,以此言之,恐甚於煬帝遠矣。深願陛下思之,無為由余所笑,則天下幸甚矣。
書き下し
臣嘗て隋室の初めて此の殿を造るを見る。楹棟は宏壮にして、大木は近道に有る所に非ず。多くは豫章より采り来たる。二千人にて一柱を拽(ひ)く。其の下に轂を施す。皆な生鉄を以て之を為す。中間に若し木輪を用いば、動けば即ち火出づ。略ぼ一柱を計るに、已に数十万を用う。則ち余費も又た此に倍を過ぐ。臣聞く、阿房成りて、秦人散じ、章華就りて、楚衆離る。乾元工を畢(お)えて、隋人体を解く、と。且つ陛下の今時の功力を以てせば、隋の日に何如。雕残の後を承け、瘡痍の人を役し、億万の功を費やし、百王の弊を襲う。此を以て之を言えば、恐らくは煬帝より甚だしきこと遠し。深く願わくは陛下之を思い、由余の笑う所と為る無かれ。則ち天下幸甚なり。
現代語訳
臣はかつて、隋がはじめてこの殿を造るのを見ました。柱も梁も壮大で、その大木は近くにあるものではなく、多くは豫章から運ばれました。二千人で一本の柱を引き、その下に車輪を敷きました。すべて鋳鉄で作られていました。もし途中で木の車輪を使えば、動いた途端に火が出るからです。ざっと一本の柱で、すでに数十万の費用がかかります。その他の費用は、さらにその倍を超えます。臣はこう聞いております。阿房宮が完成して秦の民は散り、章華台が成って楚の民衆は離れ、乾元殿が完成して隋の人心は崩れた、と。そもそも陛下の今の国力は、隋の当時と比べてどうでしょうか。荒れ果てた後を受け、傷ついた民を使役し、億万の労力を費やして、歴代の弊害を受け継ぐ。これから言えば、恐らく煬帝よりはるかに悪い。深く願わくは、陛下はこれをお考えになり、由余に笑われることのないように。それこそ天下の幸いです。