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貞観政要 / 納諫

貞觀初,太宗與黃門侍郎王珪宴語,時有美人侍側,本廬江王瑗之姬也,瑗敗,籍沒入宮。太宗指示珪曰:「廬江不道,賊殺其夫而納其室。暴虐之甚,何有不亡者乎!」珪避席曰:「陛下以廬江取之為是邪,為非邪?」太宗曰:「安有殺人而取其妻,卿乃問朕是非,何也?」珪對曰:「臣聞於《管子》曰:『齊桓公之郭國,問其父老曰:「郭何故亡?」父老曰:「以其善善而惡惡也。」桓公曰:「若子之言,乃賢君也,何至於亡?」父老曰:「不然,郭君善善而不能用,惡惡而不能去,所以亡也。」』今此婦人尚在左右,臣竊以為聖心是之,陛下若以為非,所謂知惡而不去也。」太宗大悅,稱為至善,遽令以美人還其親族。

新字:貞観初,太宗与黄門侍郎王珪宴語,時有美人侍側,本廬江王瑗之姬也,瑗敗,籍没入宮。太宗指示珪曰:「廬江不道,賊殺其夫而納其室。暴虐之甚,何有不亡者乎!」珪避席曰:「陛下以廬江取之為是邪,為非邪?」太宗曰:「安有殺人而取其妻,卿乃問朕是非,何也?」珪対曰:「臣聞於《管子》曰:『斉桓公之郭国,問其父老曰:「郭何故亡?」父老曰:「以其善善而悪悪也。」桓公曰:「若子之言,乃賢君也,何至於亡?」父老曰:「不然,郭君善善而不能用,悪悪而不能去,所以亡也。」』今此婦人尚在左右,臣竊以為聖心是之,陛下若以為非,所謂知悪而不去也。」太宗大悅,稱為至善,遽令以美人還其親族。

書き下し

貞観の初め、太宗黄門侍郎王珪と宴語す。時に美人の側に侍する有り。本と廬江王瑗の姫なり。瑗敗れ、籍没して宮に入る。太宗珪に指示して曰く、「廬江は不道にして、賊して其の夫を殺し、其の室を納る。暴虐の甚だしき、何ぞ亡びざる者有らんや」と。珪席を避けて曰く、「陛下は廬江の之を取るを以て是と為すか、非と為すか」と。太宗曰く、「安くんぞ人を殺して其の妻を取るもの有らんや。卿乃ち朕に是非を問う。何ぞや」と。珪対えて曰く、「臣は『管子』に聞く、『斉の桓公、郭国に之(ゆ)き、其の父老に問いて曰く「郭は何の故に亡びたるか」と。父老曰く「其の善を善しとして悪を悪(にく)むを以てなり」と。桓公曰く「子の言の若くんば、乃ち賢君なり。何ぞ亡ぶるに至らんや」と。父老曰く「然らず。郭君は善を善しとして用うる能わず、悪を悪みて去る能わず。亡ぶる所以なり」と』と。今此の婦人は尚お左右に在り。臣窃かに以為(おも)えらく、聖心は之を是とすと。陛下若し以て非と為さば、所謂る悪を知りて去らざるなり」と。太宗大いに悦び、称して至善と為し、遽かに令して美人を其の親族に還さしむ。

現代語訳

貞観の初め、太宗が黄門侍郎の王珪と宴の席で語り合った。その時、そばに侍る美人がいた。もとは廬江王李瑗の側室で、李瑗が敗れて没収され、宮中に入った者だった。太宗は王珪に彼女を指して言った。「廬江王は道に外れ、人を殺してその妻を奪った。暴虐の極みだ。滅びずにいられようか」。王珪は席を離れて言った。「陛下は、廬江王が彼女を奪ったことを、正しいとお考えですか、間違っているとお考えですか」。太宗は言った。「人を殺してその妻を奪うことが、どうして許されよう。あなたはなぜ私に是非を問うのか」。王珪は答えた。「臣は『管子』でこう聞きました。斉の桓公が郭の国に行き、長老に尋ねた。『郭はなぜ滅びたのか』。長老は『善を善しとし、悪を憎んだからです』と答えた。桓公は『あなたの言うとおりなら、それは賢君だ。なぜ滅びたのか』と言った。長老は『そうではありません。郭君は善を善しとしながら用いることができず、悪を憎みながら去らせることができなかった。それが滅びた理由です』と答えました。今、この婦人はなお陛下のおそばにおります。臣はひそかに、陛下の御心はこれを是としておられると思います。もし非とお考えなら、まさに悪を知りながら去らせないということです」。太宗は大いに喜び、この上ない言葉だと讃えて、ただちに美人をその親族のもとへ帰らせた。

解説

納諫篇の冒頭です。王珪は正面から諫めません。太宗自身が「廬江王は暴虐だ」と非難した、その言葉を使います。ではその奪われた女性が、今あなたのそばにいるのはなぜですか、と。「悪を憎みながら、去らせることができない」。これが郭の滅びた理由でした。正しいと知っていることと、実行することの間には、深い溝があります。

この一句を、あなたの毎日に。

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