神皇正統記 / 巻四 政みだれぬれば
民の賦斂をあつくしてみづからの心をほしきまゝにすることは乱世乱国のもとゐ也。我国は王種のかはることはなけれども、政みだれぬれば、暦数ひさしからず。継体もたがふためし、所々にしるし侍りぬ。いはんや、人臣として其職をまぼるべきにおきてをや。
書き下し
民の賦斂をあつくしてみづからの心をほしきまゝにすることは乱世乱国のもとゐ也。我国は王種のかはることはなけれども、政みだれぬれば、暦数ひさしからず。継体もたがふためし、所々にしるし侍りぬ。いはんや、人臣として其職をまぼるべきにおきてをや。
現代語訳
民から取り立てる税を重くして、自分の心をほしいままにすることは、乱れた世、乱れた国のもととなる。わが国は王の血統が変わることはないけれども、政が乱れれば、その運は長く続かない。皇位の継承が筋を外れた例も、あちこちに記しておいた。まして臣下として自分の職を守るべき立場においてはなおさらである。
解説
この書を読むときに、冒頭の「大日本者神国也」と必ず並べて置くべき一段である。「我国は王種のかはることはなけれども、政みだれぬれば、暦数ひさしからず」——血統は変わらないが、政治が乱れれば運は続かない。神国だから安泰だ、とは一言も言っていない。むしろ逆で、変わらないものがあるからこそ、変わりうるもの(政)の責任が全部こちらに来る、という構造になっている。書き出しは「民の賦斂をあつくしてみづからの心をほしきまゝにすることは乱世乱国のもとゐ也」——重税と私心が、乱れの起点として名指しされる。そして最後に「いはんや、人臣として其職をまぼるべきにおきてをや」と、話は臣下の側へ折り返される。上が守るべきことは、下ではもっと厳しく求められる。
この章句が説くこと
政乱れぬれば暦数久しからず賦斂私心職を守る