神皇正統記 / 巻三 十七条憲法
又此国には昔より人すなほにして法令なんどもさだまらず。十二年甲子にはじめて冠位と云ことをさだめ、十七年己巳に憲法十七け条をつくりて奏し給。内外典のふかき道をさぐりて、むねをつゞまやかにしてつくり給へる也。天皇悦て天下に施行せしめ給き。
書き下し
又此国には昔より人すなほにして法令なんどもさだまらず。十二年甲子にはじめて冠位と云ことをさだめ、十七年己巳に憲法十七け条をつくりて奏し給。内外典のふかき道をさぐりて、むねをつゞまやかにしてつくり給へる也。天皇悦て天下に施行せしめ給き。
現代語訳
またこの国には、昔から人が素直であったために法令などもはっきり定まっていなかった。推古十二年甲子の年にはじめて冠位というものを定め、十七年己巳の年に憲法十七か条を作って奏上された。仏典と儒書の深い道を探り、趣旨を簡潔にまとめてお作りになったものである。天皇は喜んで、天下に施行させられた。
解説
聖徳太子の十七条憲法についての評である。前置きが面白い。「此国には昔より人すなほにして法令なんどもさだまらず」——人が素直だったから、法がはっきりしていなかった、と。法の未整備を、民度の低さではなく素直さの結果として説明している。裏返せば、素直さだけでは回らなくなったから法が要ったということでもある。そして憲法の作り方が二点で押さえられる。「内外典のふかき道をさぐりて」——仏典と儒書の両方から取ること。「むねをつゞまやかにして」——趣旨を短くまとめること。広く取って、短くまとめる。この二つは相反するようでいて、規則を作るときの要点そのものである。広く取らなければ偏り、短くまとめなければ守られない。師導には十七条憲法そのものも収めてある。
この章句が説くこと
十七条憲法聖徳太子内外典簡潔