神皇正統記 / 巻一 この書のこと
唯我国のみ天地ひらけし初より今の世の今日に至まで、日嗣をうけ給ことよこしまならず。一種姓の中におきてもおのづから傍より伝へ給しすら猶正にかへる道ありてぞたもちまし〳〵ける。是しかしながら神明の御誓あらたにして余国にことなるべきいはれなり。抑、神道のことはたやすくあらはさずと云ことあれば、根元をしらざれば猥しき始ともなりぬべし。其つひえをすくはんために聊勒し侍り。神代より正理にてうけ伝へるいはれを述ことを志て、常に聞ゆる事をばのせず。しかれば神皇の正統記とや名け侍べき。
書き下し
唯我国のみ天地ひらけし初より今の世の今日に至まで、日嗣をうけ給ことよこしまならず。一種姓の中におきてもおのづから傍より伝へ給しすら猶正にかへる道ありてぞたもちましましける。是しかしながら神明の御誓あらたにして余国にことなるべきいはれなり。抑、神道のことはたやすくあらはさずと云ことあれば、根元をしらざれば猥しき始ともなりぬべし。其つひえをすくはんために聊勒し侍り。神代より正理にてうけ伝へるいはれを述ことを志て、常に聞ゆる事をばのせず。しかれば神皇の正統記とや名け侍べき。
現代語訳
わが国だけは、天地が開けた初めから今日この日に至るまで、皇位を受け継ぐことに筋の乱れがなかった。同じ一つの血筋の中でも、たまたま傍系から伝わったことすらあったが、それでも正しい流れに返る道があって保たれてきた。これはひとえに、神々の誓いがはっきりしていて他国と異なるゆえんである。そもそも神道のことは軽々しく明かすものではないと言われているから、根本を知らないままでは、いいかげんな始まりを作ってしまいかねない。その乱れを救うために、いささか書き記しておく。神代から正しい筋道で受け継がれてきたいわれを述べることを志し、世間でありふれて聞くようなことは載せない。そうであれば、この書を「神皇の正統記」と名づけるのがよかろう。
解説
この章句が説くこと
関連する章句
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『神皇正統記』巻四 書きのこす理由大かた天皇の世つぎをしるせるふみ、昔より今に至まで家々にあまたあり。かくしるし侍もさらにめづらしからぬことなれど、神代より継体正統のたがはせ給はぬ一はしを申さんがためなり。我国は神国なれば、天照太神の御計にまかせられたるにや。されど其中に御あやまりあれば、暦数も久からず。又つひには正路にかへれど、一旦もしづませ給ためしもあり。これはみなみづからなさせ給御とがなり。冥助のむなしきにはあらず。
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『神皇正統記』巻一 神国の名大日本者神国也。天祖はじめて基をひらき、日神ながく統を伝へ給ふ。我国のみ此事あり。異朝には其たぐひなし。此故に神国と云ふ也。
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『神皇正統記』巻六 筆をとゞめずぬるが中なる夢の世は、いまにはじめぬならひとはしりながら、かずかずめのまへなる心ちして老泪もかきあへねば、筆の跡さへとゞこほりぬ。昔、「仲尼は獲麟に筆をたつ。」とあれば、こゝにてとゞまりたくはべれど、神皇正統のよこしまなるまじき理を申のべて、素意の末をもあらはさまほしくて、しひてしるしつけ侍るなり。
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『神皇正統記』巻四 第五十八代 光孝天皇古すら猶かゝる理にて天位を嗣給。ましてすえの世にはまさしき御ゆづりならでは、たもたせ給まじきことゝ心えたてまつるべき也。此御代より藤氏の摂籙の家も他流にうつらず、昭宣公の苗裔のみぞたゞしくつたへられにける。上は光孝の御子孫、天照太神の正統とさだまり、下は昭宣公の子孫、天児屋の命の嫡流となり給へり。二神の御ちかひたがはずして、上は帝王三十九代、下は摂関四十余人、四百七十余年にもなりぬるにや。
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『神皇正統記』巻一 序されどこれは天祖より以来継体たがはずして、たゞ一種ましますこと天竺にも其類なし。彼国の初の民主王も衆のためにえらびたてられしより相続せり。又世くだりては、その種姓もおほくほろぼされて、勢力あれば、下劣の種も国主となり、あまさへ五天竺を統領するやからも有き。震旦又ことさらみだりがはしき国なり。昔世すなほに道ただしかりし時も、賢をえらびてさづくるあとありしにより、一種をさだむる事なし。乱世になるまゝに、力をもちて国をあらそふ。かゝれば民間より出でゝ位に居たるもあり。戎狄より起て国を奪へるもあり。或は累世の臣として其君をしのぎ、つひに譲をえたるもあり。伏犠氏の後、天子の氏姓をかへたる事三十六。乱のはなはだしさ、云にたらざる者哉。
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『神皇正統記』巻五 承久の乱を思ふさても其世の乱を思に、まことに末の世にはまよふ心もありぬべく、又下の上をしのぐ端ともなりぬべし。其いはれをよくわきまへらるべき事にはべり。
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