秘本玉くしげ / 下 互に目附役
然るを、たとひ己がかかはらぬ他の役義のうへの事にもせよ、宜しからずと思ふ事あらば、互に心をそへて相助け、又事によりては早速に申出るやうにあらば、これ諸役人みなたがひに目附役となること也。
書き下し
然るを、たとひ己がかかはらぬ他の役義のうへの事にもせよ、宜しからずと思ふ事あらば、互に心をそへて相助け、又事によりては早速に申出るやうにあらば、これ諸役人みなたがひに目附役となること也。
現代語訳
それなのに、たとえ自分が関わらない他の役職の上のことであっても、よろしくないと思うことがあれば、互いに心を添えて助け合い、また事によってはすぐに申し出るようであれば、これは諸役人がみな互いに目付役となるということである。
解説
監査の仕組みについての一段である。前段で宣長は、役人が「我役義にあづからぬ事はただそのまま見て居るばかり」——自分の担当外は見て見ぬふりをする、それを「甚不忠なること」だと言っている。その解決として置かれるのがここだ。担当外でもおかしいと思えば助け合い、必要なら申し出る。そうすれば「諸役人みなたがひに目附役となる」。専任の監査役を置くのではなく、全員が互いの目になる。実際この後の段で宣長は、目付や横目を置いても「其人ぐるみに此道におちいる故に益あることなし」と、専任監査の限界を指摘している。監視役を増やしても、その監視役が取り込まれれば終わりだ。ならば、全員が見る仕組みのほうがまだ強い、という判断である。
この章句が説くこと
互に目附役役義にあづからぬ事専任監査の限界全員の目