呉子 / 応変篇
武侯問曰:「敵近而薄我,欲去無路,我眾甚懼,為之柰何?」對曰:「為此之術,若我眾彼寡,各分而乘之。彼眾我寡,以方從之。從之無息,雖眾可服。」
新字:武侯問曰:「敵近而薄我,欲去無路,我衆甚懼,為之柰何?」対曰:「為此之術,若我衆彼寡,各分而乗之。彼衆我寡,以方従之。従之無息,雖衆可服。」
書き下し
武侯問いて曰く、敵近くして我に薄り、去らんと欲するも路無く、我が衆甚だ懼る、之を奈何せん、と。対えて曰く、此を為すの術は、若し我衆く彼寡なくば、各々分ちて之に乗ぜよ。彼衆く我寡なくば、方を以て之に従え。之に従いて息むこと無くば、衆しと雖も服すべし、と。
現代語訳
武侯が尋ねた。敵がすぐ近くまで迫ってきて、退こうにも道がなく、味方の兵はひどく怯えている。どうすればよいか。呉起が答えて言った。この場合の手立てはこうです。もしこちらが多く敵が少なければ、部隊を分けて多方面から乗じていきます。逆に敵が多くこちらが少なければ、密集した方陣を組んで敵に食らいついていく。休むことなく食らいつき続ければ、敵が大軍であっても屈服させることができます。
解説
逃げ道がなく、味方が怯えている。追い詰められた場面の問答です。呉起の答えは短く、しかも二つに分かれています。こちらが多ければ分散して包み込む。こちらが少なければ密集して食い下がる。優勢なら広げ、劣勢なら固める——兵力の多寡によって陣形を正反対にするわけです。そして劣勢の場合に強調されるのが、休まず食らいつくこと。数で劣る側が生き残る道は、相手に息をつかせない継続的な圧力にあると説きます。ここから学べるのは、まず自分の立ち位置を冷静に測ることの大切さです。追い込まれると人は状況を見ないまま闇雲に動きがちですが、優勢か劣勢かで正しい手はまるで違います。そして劣勢のときは、一発逆転の大技ではなく、粘り強く食い下がり続けることが効く。仕事でも、資源の乏しい側が勝つのは、たいてい派手な一手ではなく、途切れない継続によってです。
この章句が説くこと
窮地の対処優勢と劣勢粘り強さ現在地を測る
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呉子・応変篇武侯問いて曰く、若し敵衆く我寡なくば、之を奈何せん、と。起対えて曰く、之を易に避け、之を阨に邀う。故に曰く、一を以て十を撃つは、阨より善きは莫し。十を以て百を撃つは、険より善きは莫し。千を以て万を撃つは、阻より善きは莫し、と。今少年の卒かに起ち、金を撃ち鼓を鳴らすこと阨路に於てすること有らば、大衆有りと雖も、驚き動かざるは莫し。故に曰く、衆を用うる者は易に務め、少を用うる者は隘に務む、と。
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呉子・応変篇武侯問いて曰く、若し敵に谿谷の間に遇い、傍らに険阻多く、彼衆く我寡なくば、之を奈何せん、と。起対えて曰く、諸々の丘陵・林谷・深山・大沢は、疾く行き亟かに去り、従容たるを得ること勿かれ。若し高山深谷にて、卒然として相遇わば、必ず先ず鼓譟して之に乗ぜよ。弓と弩とを進め、且つ射且つ虜にせよ。審らかに其の政を察し、乱れなば則ち之を撃ちて疑うこと勿かれ、と。
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