呉子 / 治兵篇
吳子曰:「凡行軍之道,無犯進止之節,無失飲食之適,無絕人馬之力。此三者,所以任其上令。任其上令,則治之所由生也。若進止不度,飲食不適,馬疲人倦而不解舍,所以不任其上令。上令既廢,以居則亂,以戰則敗。」
新字:吳子曰:「凡行軍之道,無犯進止之節,無失飲食之適,無絶人馬之力。此三者,所以任其上令。任其上令,則治之所由生也。若進止不度,飲食不適,馬疲人倦而不解舎,所以不任其上令。上令既廃,以居則乱,以戦則敗。」
書き下し
呉子曰く、「凡そ行軍の道は、進止の節を犯すこと無く、飲食の適を失うこと無く、人馬の力を絶やすこと無し。此の三者は、其の上令に任うる所以なり。其の上令に任うれば、則ち治の由りて生ずる所なり。若し進止度あらず、飲食適せず、馬疲れ人倦みて解舎せざれば、其の上令に任えざる所以なり。上令既に廃れなば、以て居れば則ち乱れ、以て戦えば則ち敗る」と。
現代語訳
呉子は言った。「およそ行軍の道は、進むと止まるの節度を破らず、飲食の適切さを失わず、人と馬の力を使い果たさないことである。この三つは、上の命令に耐えうる状態を作るためのものだ。上の命令に耐えられるなら、そこから治まりが生まれる。もし進退に節度がなく、飲食が適切でなく、馬が疲れ人が疲れきっているのに宿営して休ませないなら、上の命令に耐えられなくなる。上の命令が行き渡らなくなれば、平時にあっては乱れ、戦えば敗れる」。
解説
軍を動かすうえでの三つの基本、すなわち進退の節度、飲食の適切さ、人馬の体力を使い切らないこと。呉起はこの三つを「上の命令に耐えられる状態を作るためのもの」だと説明します。ここが鋭いところで、命令が守られるかどうかは、命令の出し方だけの問題ではないというのです。休みなく動かされ、食事も満足に取れず、疲れきった状態では、どんなに正しい命令も実行できない。命令が行き渡らなくなれば、平時は乱れ、勝負どころでは敗れる。現代の職場にそのまま当てはまります。無理な稼働が続き、休息も食事も削られている状態で、いくら方針を発しても浸透しません。指示が通らないとき、多くのリーダーは伝え方や意識の問題だと考えますが、根本は現場が疲弊して受け止める余力を失っていることかもしれない。休ませることは甘やかしではなく、命令が届く土台を保つ仕事です。持続可能な稼働こそが、規律の前提になります。