呉子 / 図国篇
武侯問曰:「願聞陳必定、守必固、戰必勝之道。」起對曰:「立見且可,豈直聞乎!君能使賢者居上,不肖者處下,則陳已定矣。民安其田宅,親其有司,則守已固矣。百姓皆是吾君而非鄰國,則戰已勝矣。」
新字:武侯問曰:「願聞陳必定、守必固、戦必勝之道。」起対曰:「立見且可,豈直聞乎!君能使賢者居上,不肖者処下,則陳已定矣。民安其田宅,親其有司,則守已固矣。百姓皆是吾君而非鄰国,則戦已勝矣。」
書き下し
武侯問いて曰く、「願わくは陳の必ず定まり、守りの必ず固く、戦いの必ず勝つの道を聞かん」と。起対えて曰く、「立ちどころに見るも且た可なり、豈に直だ聞くのみならんや。君能く賢者をして上に居らしめ、不肖者をして下に処らしめば、則ち陳は已に定まらん。民、其の田宅に安んじ、其の有司に親しめば、則ち守りは已に固からん。百姓皆な吾が君を是として鄰国を非とせば、則ち戦いは已に勝たん」と。
現代語訳
武侯が尋ねた。「陣が必ず定まり、守りが必ず固く、戦えば必ず勝つ道を聞きたい」。呉起は答えた。「聞くだけでなく、ただちに目で見ることさえできましょう。君主が、賢い者を上に置き、能力の劣る者を下に置くことができれば、陣はすでに定まっています。民が自分の田畑や住まいに安んじ、役人を信頼して親しんでいれば、守りはすでに固まっています。人々がみな自分の君主を正しいとし、隣国のほうを非とするなら、戦いはすでに勝っています」。
解説
短いながら、呉子のなかでも屈指の切れ味を持つ一段です。武侯は戦い方の秘訣を尋ねたのに、呉起の答えはどれも戦場の話ではありません。人事が適正であれば陣はすでに定まり、民が暮らしに安んじて役人を信頼していれば守りはすでに固く、人々が自国の君主を支持していれば戦いはすでに勝っている。つまり勝敗は、戦う前の日常のなかでほとんど決まっているというのです。組織に置き換えれば、こうなります。適切な人が適切なポジションに就いているか。メンバーが日々の環境に安心し、上司を信頼しているか。全員が自分たちの組織の方向性を支持しているか。この三つが整っていれば、いざ勝負どころが来たときには、もう勝ち筋に乗っている。逆に、ここが崩れたまま小手先の戦術を探しても意味がありません。非常時の強さは、平時の積み重ねの結果として現れるのです。
この章句が説くこと
賢者を上に平時が勝敗を決める信頼が守りを固める人事は戦略
関連する章句
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呉子・図国篇武侯問いて曰く、「願わくは兵を治め、人を料り、国を固むるの道を聞かん」と。起対えて曰く、「古の明王は、必ず君臣の礼を謹み、上下の儀を飾り、吏民を安集し、俗に順いて教え、良材を簡び募りて、以て不虞に備う。昔、斉の桓公は士五万を募りて、以て諸侯に霸たり。晋の文公は召して前行と為すこと四万、以て其の志を獲たり。秦の繆公は陥陳三万を置きて、以て鄰敵を服せしむ。故に強国の君は、必ず其の民を料る。民に胆勇気力有る者は、聚めて一卒と為す。進みて戦い力を効し、以て其の忠勇を顕すを楽しむ者は、聚めて一卒と為す。能く高きを踰え遠きを超え、足軽くして善く走る者は、聚めて一卒と為す。王臣にして位を失い、功を上に見さんと欲する者は、聚めて一卒と為す。城を棄て守りを去り、其の醜を除かんと欲する者は、聚めて一卒と為す。此の五者は、軍の練鋭なり。此の三千人有らば、内より出でては以て囲みを決すべく、外より入りては以て城を屠るべし」と。
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呉子・治兵篇武侯問いて曰く、「兵は何を以て勝と為す」と。起対えて曰く、「治を以て勝と為す」と。又た問いて曰く、「衆寡に在らざるか」と。対えて曰く、「若し法令明らかならず、賞罰信ならず、之を金するも止まらず、之を鼓するも進まずんば、百万有りと雖も、何ぞ用に益あらん。所謂る治なる者は、居れば則ち礼有り、動けば則ち威有り、進めば当たるべからず、退けば追うべからず、前却に節有り、左右麾に応じ、絶ゆと雖も陳を成し、散ずと雖も行を成す。之と安んじ、之と危うくす。其の衆は合すべくして離すべからず、用うべくして疲らすべからず。之を往く所に投ずれば、天下当たる莫し。名づけて父子の兵と曰う」と。
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呉子・図国篇呉起、儒服にして兵機を以て魏の文侯に見ゆ。文侯曰く、「寡人は軍旅の事を好まず」と。起曰く、「臣は見るるところを以て隠れたるを占い、往きしを以て来たるを察す。主君何ぞ言と心と違うことを言わるるや。今、君は四時に人をして皮革を斬り離たしめ、掩うに朱漆を以てし、画くに丹青を以てし、爍かすに犀象を以てす。冬日に之を衣れば則ち温かならず、夏日に之を衣れば則ち涼しからず。長戟は二丈四尺、短戟は一丈二尺を為る。革車は戸を奄い、輪を縵にし轂を籠む。之を目に観れば則ち麗しからず、之に乗りて以て田すれば則ち軽からず。識らず、主君安んぞ此を用いんや。若し以て進みて戦い退きて守るに備うるも、能く用うる者を求めざれば、譬えば猶お伏鶏の狸を搏ち、乳犬の虎を犯すがごとし。闘心有りと雖も、之に随いて死せんのみ。昔、承桑氏の君は、徳を修めて武を廃し、以て其の国を滅ぼせり。有扈氏の君は、衆を恃み勇を好み、以て其の社稷を喪えり。明主は茲に鑒み、必ず内には文徳を修め、外には武備を治む。故に敵に当たりて進まざるは、義に逮ぶこと無きなり。僵屍して之を哀しむは、仁に逮ぶこと無きなり」と。是に於いて文侯は身自ら席を布き、夫人は觴を捧げ、呉起を廟に醮し、立てて大将と為し、西河を守らしむ。諸侯と大いに戦うこと七十六、全勝六十四、余は則ち鈞しく解く。土を四面に闢き、地を拓くこと千里なるは、皆な起の功なり。
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呉子・図国篇呉子曰く、「昔の国家を図る者は、必ず先ず百姓を教えて万民に親しむ。四つの不和有り。国に和せざれば、以て軍を出だすべからず。軍に和せざれば、以て陳を出だすべからず。陳に和せざれば、以て進みて戦うべからず。戦に和せざれば、以て勝を決すべからず。是を以て有道の主は、将に其の民を用いんとするや、先ず和して大事を造す。敢えて其の私謀を信ぜず、必ず祖廟に告げ、元亀に啓き、之を天時に参し、吉なれば乃ち後に挙ぐ。民、君の其の命を愛しみ、其の死を惜しむこと、此くのごとくに至れるを知りて、之と難に臨めば、則ち士は死を尽くすを以て栄と為し、退きて生くるを辱と為すなり」と。
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呉子・治兵篇呉子曰く、「凡そ行軍の道は、進止の節を犯すこと無く、飲食の適を失うこと無く、人馬の力を絶やすこと無し。此の三者は、其の上令に任うる所以なり。其の上令に任うれば、則ち治の由りて生ずる所なり。若し進止度あらず、飲食適せず、馬疲れ人倦みて解舎せざれば、其の上令に任えざる所以なり。上令既に廃れなば、以て居れば則ち乱れ、以て戦えば則ち敗る」と。
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『臣軌』卷下 良將章昔、魏の武侯、呉起に問いて曰く、「兵は何を以て勝ちと為す」と。呉子曰く、「兵は整を以て勝ちと為す」と。武侯曰く、「衆に在らざるか」と。対えて曰く、「若し法令明らかならず、賞罰信ならず、之を金して止まらず、之を鼓して進まざれば、百万の師有りと雖も、何ぞ用に益あらん。所謂整なる者は、居れば則ち礼有り、動けば則ち威有り。進めば当たる可からず、退けば追う可からず。前卻に節有るが如く、左右麾に応ず。之と安んじ、之と危うくし、其の衆は合う可くして離る可からず、用う可くして疲らす可からず」と。是れ之を礼将と謂うなり。呉起戦いに臨み、左右剣を進む。呉子曰く、「夫れ鼓を提げ桴を揮い、難に臨みて疑いを決す、此れ将軍なり。剣の任は将の事に非ざるなり。
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