言志四録 / 南洲手抄
凡區處人事、當先慮其結局處、而後下手。無楫之舟勿行、無的之箭勿發。
新字:凡区処人事、当先慮其結局処、而後下手。無楫之舟勿行、無的之箭勿発。
書き下し
凡そ人事を区処するには、当さに先づ其の結局の処を慮かりて、後に手を下すべし。楫無きの舟は行る勿れ、的無きの箭は発つ勿れ。
現代語訳
およそ物事を処理するには、まずその結末(着地点)をよく考えてから、手をつけるべきである。舵(楫)のない舟を漕ぎ出してはならない。的のない矢を放ってはならない。
解説
着手する前に「結末」を見通せ、と説く実践的な一条です。物事に取りかかるときは、まずどこに着地するのか、その結局の処を思い描いてから手をつけよ。それを一斎は二つの鮮やかな比喩で示します——舵のない舟を漕ぎ出すな、的のない矢を放つな。方向(舵)と目標(的)を定めずに動き出せば、労力は空回りするだけです。六十七番「弓を射るように」とも響き合います。とりあえず動く、勢いで始める——そんな行動主義に対し、まず終わりから逆算せよという段取りの要諦。目的とゴールを見定めてから動く大切さを、忘れがたい比喩で刻む一条です。
この章句が説くこと
逆算目的段取り舟と矢