言志四録 / 南洲手抄
人貴厚重、不貴遲重。尚眞率、不尚輕率。
新字:人貴厚重、不貴遅重。尚真率、不尚輕率。
書き下し
人は、厚重を貴ぶ、遅重を貴ばず。真率を尚ぶ、軽率を尚ばず。
現代語訳
人は、重厚さ(厚重)を尊ぶべきで、鈍重さ(遅重)を尊ぶのではない。ありのままの率直さ(真率)を尊ぶべきで、軽はずみ(軽率)を尊ぶのではない。
解説
よく似た二組の言葉を対比して、美徳とその紛い物を区別した一条です。どっしりとした重厚さ(厚重)は尊いが、単に反応が鈍いだけの鈍重さ(遅重)は違う。飾らず率直なこと(真率)は尊いが、単なる軽はずみ(軽率)は違う。「重い」と「鈍い」、「率直」と「軽率」——一字違いで、美徳と欠点が分かれます。第一条や三十五番の「似て非なるもの」の系譜で、自分や他人を評するときの物差しを与えてくれます。慎重さと優柔不断、素直さと無思慮を取り違えないこと。人物を見る目を磨く、簡潔で実用的な一条です。
この章句が説くこと
厚重と遅重真率と軽率人物眼似て非なるもの