言志四録 / 南洲手抄
勿認游惰以爲寛裕。勿認嚴刻以爲直諒。勿認私欲以爲志願。
新字:勿認游惰以為寛裕。勿認厳刻以為直諒。勿認私欲以為志願。
書き下し
游惰を認めて以て寛裕と為すこと勿れ。厳刻を認めて以て直諒と為すこと勿れ。私欲を認めて以て志願と為すこと勿れ。
現代語訳
怠け心を「おおらかさ」と取り違えてはならない。厳しすぎることを「正直さ」と取り違えてはならない。私欲を「志」と取り違えてはならない。
解説
人は自分の欠点を、よく似た美徳の名で呼んで正当化しがちだと一斎は戒めます。怠惰を「寛容」、狷介な厳しさを「実直」、私利私欲を「大志」と言い換えれば、反省の必要は消えてしまう。しかしそれは似て非なるもの、自己欺瞞にほかなりません。この見分ける目は他人ではなく、まず自分自身へ向けるべきものです。自らの動機を一つひとつ本当の名で呼び直すこと——そこから修養は始まります。耳ざわりのよい自己正当化に流されがちな私たちに、鋭い問いを突きつける冒頭の一条です。
この章句が説くこと
自己欺瞞似て非なるもの私欲修養
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