易経 / 文言
陰雖有美「含」之以從王事,弗敢成也。地道也,妻道也,臣道也。地道「无成」而代「有終」也。天地變化,草木蕃。天地閉,賢人隱。《易》曰「括囊、无咎无譽」,蓋言謹也。
新字:陰雖有美「含」之以従王事,弗敢成也。地道也,妻道也,臣道也。地道「无成」而代「有終」也。天地変化,草木蕃。天地閉,賢人隠。《易》曰「括嚢、无咎无誉」,蓋言謹也。
書き下し
陰は美有りと雖も之を「含」みて以て王事に從い、敢えて成さざるなり。地の道なり、妻の道なり、臣の道なり。地の道は「成すこと无く」して「終わり有る」に代わるなり。天地變化して、草木蕃る。天地閉じて、賢人隱る。《易》に曰く「囊を括る、咎无く譽无し」とは、蓋し謹むを言うなり。
現代語訳
陰は美点を持っていても、それを内に含みおさめて王の事業に従い、あえて自分の手柄として成し遂げようとはしない。これが地の道であり、妻の道であり、臣の道である。地の道は、自分が成し遂げることはなくとも、代わって終わりをまっとうするのである。天地が変化すれば、草木は生い茂る。天地が閉ざされれば、賢人は身を隠す。易に「袋の口を括る。咎もなく誉れもない」とあるのは、おそらく慎みを言ったものである。
解説
坤の卦の徳を、支える立場のあり方として述べた段です。美点があってもそれを内に含み、手柄を自分のものにしない。自分が成し遂げるのではなく、代わって終わりをまっとうする。地が万物を育てながら功を誇らないように、支える者の働きは目立たないところにある、という見方です。現代の感覚では控えめすぎるようにも読めますが、実務に引きつければ、これは黒子の仕事の尊さの話でもあります。段取りをつけ、後始末を引き受け、成果は前に立つ人に持たせる。組織はそういう働きに支えられています。後半で示されるのは、時勢を読む態度です。天地が通じて変化があれば草木は茂り、閉ざされれば賢人は身を隠す。袋の口を括るように口をつぐみ、咎もなく誉れもない状態を選ぶ。それを易は慎みと呼びます。動くべきでない時期に無理に動かない。これも一つの見識ある選択です。
この章句が説くこと
坤含章括嚢慎み
関連する章句
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易経・坤卦霜を履みて堅冰とは、陰始めて凝るなり。其の道を馴致すれば、堅冰に至るなり。六二の動は、直にして以て方なり。習はずして利あらざる无しとは、地道光(おほ)いなればなり。章を含みて貞にすべしとは、時を以て発するなり。或いは王事に従ふとは、知光大なればなり。嚢を括る咎无しとは、慎めば害あらざるなり。黄裳元いに吉とは、文中に在ればなり。龍野に戦ふとは、其の道窮まればなり。用六永く貞なるは、大を以て終ふるなり。文言に曰く、坤は至柔にして動くや剛なり、至静にして徳方なり。後るれば主を得て常有り、万物を含みて化光いなり。坤道は其れ順なるか。天を承けて時に行ふ。
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