易経 / 繋辞下
變動以利言,吉凶以情遷。是故愛惡相攻而吉凶生,遠近相取而悔吝生,情偽相感而利害生。凡易之情,近而不相得則凶,或害之,悔且吝。將叛者其辭慚,中心疑者其辭枝,吉人之辭寡,躁人之辭多,誣善之人其辭游,失其守者其辭屈。
新字:変動以利言,吉凶以情遷。是故愛悪相攻而吉凶生,遠近相取而悔吝生,情偽相感而利害生。凡易之情,近而不相得則凶,或害之,悔且吝。将叛者其辞慚,中心疑者其辞枝,吉人之辞寡,躁人之辞多,誣善之人其辞游,失其守者其辞屈。
書き下し
変動は利を以て言い、吉凶は情を以て遷る。是の故に、愛悪相攻めて吉凶生じ、遠近相取りて悔吝生じ、情偽相感じて利害生ず。凡そ易の情、近くして相得ざれば則ち凶なり。或いは之を害し、悔い且つ吝なり。将に叛かんとする者は其の辞慚じ、中心疑う者は其の辞枝わかる。吉人の辞は寡なく、躁人の辞は多し。善を誣うる人は其の辞游ぎ、其の守を失う者は其の辞屈す。
現代語訳
変化と動きは利という面から語られ、吉凶は人の情のありように従って移る。だからこそ、愛と憎しみとが攻め合って吉凶が生じ、遠さと近さとが取り合って悔いや恥が生じ、まことと偽りとが感じ合って利害が生じる。およそ易のとらえる人の情というものは、近い間柄でありながら互いに相容れないときには凶となる。時にはこれを害し、悔いも恥もついてまわる。裏切ろうとする者は、その言葉に恥じらいの色がある。心中に疑いを抱く者は、その言葉が枝分かれして定まらない。善良な人の言葉は少なく、落ち着かぬ人の言葉は多い。善人を陥れようとする者は、その言葉が浮ついて漂う。守るべきものを失った者は、その言葉が縮こまる。
解説
繋辞下伝を締めくくる一段は、人の情と言葉についての観察です。吉凶は状況が決めるのではなく、人の情のありようとともに移ると述べます。愛と憎しみがぶつかれば吉凶が生まれ、まことと偽りが交われば利害が生じる。とりわけ「近くして相得ざれば則ち凶」は鋭い指摘です。遠い相手より、近い間柄の不和のほうが災いは深いのです。家族、同僚、共同経営者。距離が近いほど、すれ違いは大きな傷になります。後半は、言葉に人のうちがあらわれるという有名な観察です。裏切ろうとする者の言葉には恥じらいがにじみ、疑いを抱く者の言葉は枝分かれして定まらない。落ち着いた人は言葉が少なく、浮足立った人は言葉が多い。人を陥れようとする者の言葉は漂って地に足がつかず、拠り所を失った者の言葉は縮こまる。これは人を裁く基準ではなく、自分の言葉を省みる鏡です。今日の自分の言葉は多すぎないか、定まっているか。そこに心の状態が正直にあらわれます。