易経 / 繋辞下
子曰:「君子安其身而後動,易其心而後語,定其交而後求,君子脩此三者,故全也,危以動,則民不與也,懼以語,則民不應也,无交而求,則民不與也,莫之與,則傷之者至矣。易曰:『莫益之,或擊之,立心勿恆,凶。』。」
新字:子曰:「君子安其身而後動,易其心而後語,定其交而後求,君子脩此三者,故全也,危以動,則民不与也,懼以語,則民不応也,无交而求,則民不与也,莫之与,則傷之者至矣。易曰:『莫益之,或擊之,立心勿恒,凶。』。」
書き下し
子曰く、「君子は其の身を安んじて而る後に動き、其の心を易くして而る後に語り、其の交わりを定めて而る後に求む。君子は此の三者を脩む、故に全し。危うくして以て動けば、則ち民与せず。懼れて以て語れば、則ち民応ぜず。交わり无くして求むれば、則ち民与えず。之に与うる莫ければ、則ち之を傷る者至る。易に曰く、『之を益すこと莫し。或いは之を撃つ。心を立つること恒无し、凶』」と。
現代語訳
孔子はいわれた。「君子は自分の身を安定させてから動き、自分の心を穏やかにしてから語り、相手との交わりを定めてから求める。君子はこの三つを修めている。だから欠けるところがない。足元が危ういまま動けば、人はついてこない。おびえながら語れば、人は応じない。交わりもないのに求めれば、人は与えてくれない。誰も与えてくれないとなれば、やがて害する者が現れる。易に『これを益する者はいない。かえって撃つ者がある。心の立て方に一貫性がない、凶である』とあるとおりだ」と。
解説
動く前に身を安んじ、語る前に心を穏やかにし、求める前に関係を築く。この三つの順序を説いた一段です。逆をやればどうなるかも、はっきり示されています。足元が固まらないまま動けば人はついてこず、おびえながら語れば言葉は届かず、関係もないのにいきなり頼めば断られる。そして誰も味方につかない状態を放置すれば、やがて攻撃してくる者まで現れる。益の卦の上爻が引かれ、その原因は「心を立つること恒无し」、つまり腹の据わり方が一定でないことだとされます。ここで語られているのは、順番の問題です。動く、語る、求めるという行為そのものが悪いのではなく、その前に置くべき準備を飛ばすことが問題なのです。仕事でいえば、企画を通したいなら、まず自分の担当を安定させ、落ち着いて話せる状態をつくり、相手との信頼を積んでから頼む。焦って順序を飛ばすほど、話は通らなくなります。急がば回れは、易においては人望の育て方そのものです。